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会社員に向いていないが会社員を続けている関連

 会社員の仕事をもう17年ぐらい続けていますが、自分が会社員に向いていると思ったことはありません。ずっと向いていないなあと思いながらそれだけの時間が過ぎました。

 

 それだけ続けられているのだから向いているんだよって言われたこともありますが、それは人が基本的に結果から演繹して判断しているというだけの話で、じゃあ、僕が今全部やーめたと言って会社を辞めたら、向いていなかったことになるんでしょうか?

 僕は苦手だけど会社員を続けていて、それは精神の問題ではなく様々な工夫によって成り立っています。

 

 自分の会社員に向いていないところを挙げると、「進行状況が悪いのになかなか手を付けられず〆切間際に頑張ってなんとかしようとする」「朝起きるのが苦手」「他人を頼るのが下手」「対人コミュニケーションに消極的」「自分で手を挙げず、誰かがやってくれるのを待ってしまう」あたりがあります。

 会社の仕事にはたいてい計画があり、それをどのようにして計画通りに行うかという部分が重要です。

 

 僕は計画通りに動くのがとても苦手で、なおかつ計画通りに行っていないときでも、他の人を頼ったりすることが苦手ですし、そのために予め色んなところと関係性を作っておくみたいなことも苦手です。放っておくと、問題を起こしてはそれを大きくし、結果的に仕事も上手く行かないみたいな迷惑な人間になると思います。

 若いころはこの性質により会社の人に色んな迷惑をかけており、めちゃくちゃ怒られたりもしていました。

 

 そこで思ったのは、自分はそういう性質の人間であるという諦めです。またそれはそこまで特別劣っているわけでもないだろうなという認識です。まず重要なのは自分のそういう性質を許すことだなと思います。

 なぜなら許さないでいたとしても、その性質が改善されるわけではないからです。それを許さないると、ただ「自分がまともではない」という気持ちだけが暴走して、余計に酷いことになります。なりました。

 

 やらないといけないことは分かっているのに、やらないままで締め切りまでの時間を刻一刻と過ごしていくということは、結局やらないくせに精神の具合だけが悪くなっていくので損しかありません。元気よく締め切りまで何もやらない方がまだましだなと思います。

 

 今は自分という存在を、2面として捉えています。制御できない暴れ馬としての自分と、その上にもう少し理性的なお侍さんの自分を乗せるようなイメージです。馬が暴れるのは仕方がなく、とにかくその馬に乗った状態で目的地に行ければいいと思います。多少効率が悪くても、自分が乗っているのが暴れ馬なのは仕方がありません。

 その「馬の乗り方」が重要な部分で、会社員に向いていない自分を、上手く会社員としての枠組みに収める技術に当たります。

 

 別にたいそうなことをしているわけではなく、自分に何故それができないか?を考えて、どうやったらそれができるか?という試行錯誤を繰り返し、少しずつできる方法を探っていくしかありません。それは、そんなに突飛な方法をやっている感じでもないです。

 例えば、なかなか仕事に手を付けられないのは、自分の場合、その仕事が大きいときです。大きい仕事はやるのに大きなエネルギーがいるので、今はエネルギー不足でまだそのときではない…と思ってしまいます。結局そんな大きなエネルギーが自然に生まれることは「ない」ことが分かっており、〆切が近づいてきて本格的にマズいぞとなってきたときにその焦りをエネルギーに変えてやっと始められるという感じになりがちです。

 

 このような場合は、その大きな仕事を小さく砕く工程をまず入れます。実際にはその小さく砕くことが面倒でなかなか手を付けられないこともありますが、自分をごまかすために奇声をあげながらでもやったり、他の人との定例の打合せをやっている逃げられない時間の中で砕くのに付き合ってもらったりをしています。

 仕事を細かく砕いていくと、一息で出来る仕事ができてくるので、これらは少しのエネルギーでやることができます。結局〆切ギリギリになったとしても、予め少しの作業が進んでいればかなり助かりますし、締め切り間際にやっと手を付けて、そこで進める上での重大な問題が見つかったときが一番ヤバいので、問題があるなら早めに気づくことができることで寿命が延びます。

 あとは、早くレスポンスするなら雑でも良いという自分ルールがあります。連絡を貰って即時に返事をするなら、短文だけの返答でもよいというように自分を許しており、遅くなるほどにちゃんとした文章で返事をしなければいけないプレッシャーが出てくるので、それをさけるために「はい」とか「了解です」と箇条書きの返答ぐらいの雑然とした返事をしたりしています。

 連絡をしてくれる側からしても、ちゃんとしてるけど遅い返答よりは、まず返答が早いことが重要だと思うので、そんなに怒られません。怒る人もいます。

 

 自分の脳が信用できません。なので重要なのは書き出すことです。やることを網羅的に書き出すことと、スケジュールの進捗状況を書き出すことも心を軽くします。自分の頭の中では処理しきれないので、それを頭の中に置いていると色んなことを考えることが困難になり、なおかつ、曖昧に認識しているために不安が増幅されたりします。

 書き出してみると、意外とやらなければならないことは限定的であると分かったり、今どれぐらい遅れているかが分かれば、今どれだけ頑張らないといけないかの量が明確になるので、頭の中の想像で増殖させ過ぎないで済むようになります。

 

 人を頼るのも苦手ですし、関係性を作るのも苦手なので、会社の人と仕事をするようにしています。日常の中で仲良くするのは苦手ですが、一緒に仕事はできるからです。仕事は目的があり、そのための役割を担えばいいので、人と人というふわっとした関係性よりはやりやすいです。そのためにやっていることは安請け合いで、人から頼まれたことはできるだけ安請け合いしています。

 そのようなやり取りを繰り返すと、困ったことがあると頼って貰えますし、そのルートが確立できていれば、自分から頼むこともできたり、頼んでもお互い様ということで快く引き受けてくれることも増えます。

 僕が会社で仕事を沢山しているのは、人間関係が苦手という理由があると思っていて、仕事を一緒にすることぐらいしか数少ない友人以外の人と関わることができない自分をどうにかするための方法だと思っています。


 朝起きれないという問題も昔からあって、厳密に言うと、朝は目覚めてはいるのですが、会社に行くために家からなかなか出れないという問題があり、今もだいたいギリギリになっています。基本的に9:00に出社しようと思っているものの、実際に9:00に来ていることの方が少なく、9:00に行こうと思いながら、大体9:30ぐらいまでに日々ブレのある時間に来ていることが多いです。こういう少しの遅刻を許容することが精神的には楽になり、そのために勤務時間に柔軟性のある会社の制度を利用しています。

 日々コンディションや取り巻く状況は異なるので、その中で毎日同じ時間に来ようと思うと、日々違うことをしないといけません。僕は日々同じことを続ける方が気が楽なので、同じことを続ける結果、日による状況の違いによって到着時間がブレてきます。雨が降ると遅刻をしやすいです(ずっとフレックスか裁量労働で働いているので、勤務的には遅刻と判定されなせんが)。

 なので、たまに朝5時台の電車に乗って仕事に行かないとアウト、みたいなことがあって、そういう時期は頑張ってなんとかしていますがストレスは溜めています。期間限定だからなんとか頑張れますが、毎日だと無理だなと思っています。

 

 今も様々なプレッシャーから精神的にはヤバめの時期なんですが、自分がそうなっているかどうかの判定は、優先度の高いことしかできなくなっている自分の状態と、行動の切替がなかなかできなくなるみたいなところでしています。例えば、ゴミ捨てができなくなってくるとヤバ判定、風呂になかなか入れなかったり、入ったらなかなか出られなかったりするとヤバ判定です。そういうときは自分がヤバくなっているという認識をまず持つ必要があるなと思っています。

 この状態では、色んなことを上手く回すのが難しくなっているなと思うと、上手く出来なくても「そういう時期だからな」と思って、そこで気に病むことはしないようにしています。人間には調子の良いときと悪いときがあり、悪いときには良いときにできることができなくても仕方ないなと思っています。

 

 とにかく何かが上手くできないときに、「上手くやるべきなのにできていない自分」のことで悩み始めたら悪い兆候だと思っていて、そこで自分の悪さで悩んでも別にそれが解決に繋がらないので、終わりなく悩み続けることができるんですよね。

 悩んでいると行動も停滞してきますし、停滞しているとそれによってまた悩むの悪循環です。まずは悩み過ぎないということが重要で、そのためには、自分の今の状況はよくあることであり、定期的に訪れることであり、そんなに特別なことではないという認識を持つのが有効だなと思っています。

 

 そんなこんなでなんとか計画を計画通りに回すことができており、会社員をなんとかやれております。漫画の仕事を兼業でできているのもその応用で、何かをできない暴れ馬の自分を乗りこなす乗馬術が身についているため、それで自分をコントロールして上手く誘導してやればなんとかできているという状況です。

 

 具体的に言えば、自分が行動を起こすためのスイッチを用意することと、それによって、やらないといけないけどやってないという虚無の時間を可能な限り短縮するということです。また、全体の工程に対して自分が今どれだけ出来ているかを細かく管理して、細かく達成感を得たり、仕事量を上手く分散させたりしています。

 それができれば、会社の仕事をしている以外の手持ち時間から逆算して、その範囲での漫画の連載は可能です。僕の場合は、月に50~60ページは描けるなという実感があり、その範囲での仕事を、出来ると言ってやらせてもらっている感じです。一年前は月に無理なくできるのは30ページぐらいかなと思っていたので、効率化が進みました。

 

 何にも上手くやれませんが、その中でも少しの成功体験を踏み固めで広げていき、自分を上手く制御する方法を見つけることが重要なのではないかと思っています。僕が今やっている方法も全然完完璧ではないので、その辺は日々仕事をしつつアップデートしていく感じです。

 まずは自分について期待することをやめ、自分に対して諦めて、その上で、自分に対して一生つき合っていくこいつをどうにかしないといけないと他人と節するように考えていくのが良いのではないかと今は思っていて、それをやっています。