漫画皇国

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AIがお話を作るということ関連

 AIにお話って作れるんでしょうか?

 

 手塚治虫の漫画をAIに学習させて新しい漫画を作る試みこと「ぱいどん」が今週のモーニングに載っていました。

 作り方の解説を見ると、お話については、過去の作品から人手で属性情報を抽出し、あるひな形に合わせてパーツの組み合わせて新しいプロットを多数生成したという手法で、その案の中から人がひとつを選び、その選んだプロットに合わせて人がシナリオを作るという形式だそうです。僕はこれはあまりAIが作ったという感じではないなと思いました。現時点ではAIは人にインスピレーションを与える手がかりを与えているだけのように思うからです。

 

 ただしこれは、漫画のお話とはどのような構造のものであるのかということを分析する手法としては面白いと思います。僕は漫画の同人誌を作っていますが、いまだに自分がどうやって話を作っているのかがさっぱり分かりません。なぜか漫画は完成していますが、なんで完成しているのかは全然わかりません(冗談で言っているのではと思うかもしれませんが、真面目にそうなんです)。

 お話というものがどういう構成要素のもとに作られているかを分析することは、様々な作品を系統だてて分類することに役立つでしょうし、そこには意味も意義もあることでしょう。

 そのように、自分たちが作っているお話とは何なのか?その謎と神秘に少しでも迫り、明らかにすることには興味があります。

 

 さて話変わって、ちょっと前、僕のTwitterのタイムラインではツイートの自動生成が流行りました。それはWebサービスで、自分たちの過去の発言をマルコフ連鎖を使って上手く切り貼りすることでそれっぽい文章を作り出すものなのです。それがとても面白くて、なぜ面白いかというと、何の意図もなく切り貼りしたはずの文章に、時折感情を読み取ることができたからです(AIくんに感情が!?)。

 自動生成はこう読ませようという意図があるわけではなく、ただ繋がるように繋げただけなのだと思いますが、そこには元となった文章にはなかった別のニュアンスが読み取れることがあって、僕はそれをたいへん面白く思いました。

 

 だってそれはたった140文字ですが、AIが作ったお話とも言えるじゃないですか。以下、適当に僕自身の自動生成を貼ってみます。

 

 

 どうですか?意味、感じちゃいましたか??(感じないかもしれません…)

 もし、意味を感じ取れたなら、お話という概念の核はAIの中には全くなく、読み手の側にあることが理解できるはずです。そういう意図をもって書かれたものではないのに、そういう意味を読み手が勝手に見いだしてしまうことがあるということです。ひょっとして創作の秘密のひとつはそこにあるのではないでしょうか?そう思うと、僕自身は実はそのようにお話を作っている気すらしてきました。

 

 つまり、自分が何気なく途中まで描いたものを読み手として読み返すことで、何かしらの自分の意図ではない、勝手な意味を見出し、そこから創作者の特権として、それを正解として自分の作る物語に取り込むことで、意図して設計されたものではない謎の連鎖を作りだして展開させていくという方法を僕はとっているからです。

 これはプロットという概念とは真逆に存在するものではないかと思います。なぜならば、寄り添うべき最初の設計が全くないからです。僕は確かにそのようにお話を作っているんですよ。プロットも作ってみたりするんですが、それをそのままお話できた試しがありません。途中でひん曲がります。

 ただ、こういう作り方をしていると人に話すと、「変」って言われるので、え、でもじゃあ他の人はどうやってお話を作っているのかが気になりますね。

 

 ともかくAIに物語が作れるか?という問いについては、僕がAIですということを答えとさせて頂きます。

 

 これは間違った答えです!!しかし、もしAIに物語が作れるかということを考えるなら、そこには「物語を読めるAI」が必要なのかもしれません。素材を元に沢山のパターンとその組み合わせを生成することはできても、その中でどれが良いか、どれが人に感動をもたらすかを選ぶことができないからです。もし物語を読むことができるAIがいれば、無数に生み出される物語の可能性の中から、良いものを選び、それを人に教えてくれるようになるかもしれません。

 そのように、例えばお話を読ませると感動して泣くAIがいたら、僕は作る試みよりもより強く興味を持ってしまうかもしれませんね。そうすれば、自分の描いた漫画がどのように読まれたかもすぐに知ることができますし、よりよく改善するための糸口になるかもしれません。

 

 言いたいことはだいたい終わりですが、それにしても、意図したわけではない自動生成文章から意味を見出すことができるということはめちゃくちゃ怖いことだとも思いませんか?例えば、自分が誰かを傷つける意図がなかった文を書いたとしても、傷つけるニュアンスを別の誰かが読み取るかもしれないじゃないですか。文章は誰かから誰かに情報を伝えるものですが、その伝達過程で存在しなかった情報が読み手の感性によっていきなり生まれるということを、これは示唆しています。

 その意図しない読み取り方によって、僕は誰かから良い人にされるかもしませんし、悪い人にされるかもしれません。なので、自分が書いた文章から、それが意図していないとはいえ何らかの別の情報を読み取れるように書いてはいないか?をチェックしてから文章は外に出していることが多いです。

 

 逆に、僕自身も他人の発言意図や人となりなんかを勝手に解釈している可能性だって全然あるわけですよ。もしかしたら、この人には悪意を持たれているかもしれないとか、もしかしたら、僕はこの人に好かれちゃってるかもしれないとか、色々思って心を乱してしまっても、それが実はまったく勘違いかもしれません。そんな風に自分の頭の中だけで踊っている感じだとしたら、人はなんて孤独なんでしょうね。

 

 そんな孤独のお伴にはお話が一番、お話はどれだけ間違って読んでも人とは違ってそんなに困らないので、堂々と間違った読み方をすることができます。人間は辛いことばかりです。AIになろう。