漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

中年から漫画家になるためのアドバイスを求められることがある関連

 僕が34歳から同人活動を始め、37歳で同人誌で漫画の賞を受賞、39歳から商業仕事を始めて、40歳から連載を始め、今42歳で単行本を6冊出したりしているため、ときおり人から、中年から漫画家になるためのアドバイスを求められることがあります。

 でも、あんまり上手く答えられたことがないので、改めてちょっと考えてみようと思います。

 

 漫画家になるということは、運の要素もあり、極端な話をすればたった一人に漫画を気に入られれば、商業誌で漫画を描くことはできると思います。それは、その一人がその雑誌の編集長である場合です。

 でも、それで1冊単行本が出て漫画家になることって実はそんなに意味がないことです。なぜなら、「商業誌で漫画を描き続ける」ということは「何千何万の人に漫画を面白いと思ってもらい、そして単行本を買ってもらい続ける」ということだと思うからです。なので、運良く一人に気に入られて漫画家になったとしても、何千何万の人にウケて買ってもらえなければ、結局は続けられないものだと思います。

 

 なので、何千何万もの人に面白いと思ってもらい続ける漫画とは何か?を考えて描き続けていれば、それぐらいの面白い漫画を描ける頃には、受賞や担当がつくことやデビューや連載や単行本が出ることは、中間のプロセスとして自然とついてくるのではないかと思います。

 漫画は仕事じゃなく、趣味としても楽しく続けられるもので、今はネットがあればお金もほとんどかからずに漫画を描いて発表する活動ができます。その中でわざわざ商業誌でやろうとすると、「ちゃんと継続的にお金が貰えるものを描く」ということの意識が前提として必要なのではないかと思っています。そこがないと、仮にデビューができたとしても、思ったのと違うと思って辞めちゃう可能性も高いんじゃないかと思います。

 一方で、そんな意識なんて何もないのに自然と爆売れする人もいるのが漫画の面白いところでもありますが。

 

 そういった前提のもとに思うことを書きますが、まず今の漫画編集部では、年齢が問題にされることは基本的にないと思います。少なくとも僕はされたことがないですし、色んな編集さんに聞いても「関係ない。面白い漫画を描けることの方が大事」という言葉が返ってきます。

 

 ただし、伸び代は見られるかもしれません。漫画家としてデビューする時点では、トッププロの漫画家さんたちと比較して、相対的に多方面の能力がまだ低い状態のことが大半だと思いますが、「この人はこの先どんどん能力を伸ばしていく人なのかどうか?」というところは見られているのではないかと思います。

 つまり、前作より今作の方が良くなっているかは見られるのではないでしょうか?例えば10作漫画を描いた場合、1作目より10作目が目に見えて面白くなっていれば、面白くするためのスキルが伸びていると感じてもらえて、将来、さらに面白いものを描けそうだと思って貰える気がします。

 

 「若い人と中年の差」として捉えられているのは、実は「伸び代の有無」がではないかと思っていて、若い人がどんどん伸びているときに、中年が何年も停滞していると、若い人の方が将来性があると思われるでしょうし、逆に若い人だとしても何作描いても変化が乏しければ期待をかけて貰えないかもしれません。なので、中年だとしても1作1作でより面白いものを作れるようになるということが大事なのではないかと思います。年齢は関係ありませんが、伸び代を見せることは必要だと思います。

 そのために必要なのは「考えて描く」ことだと思っていて、自分の考える面白いとは何なのか?より面白くするためには何をすればいいのかを考え続け、漫画に反映する必要があると思います。

 

 ちなみに、この辺のことは僕とかのような凡才が前に進むための方法として書いているので、才気溢れる人ならば、何も考えなくても先に進めるのかもしれません。

 

 「面白いって何なのか」は答えがひとつではないと思うので難しい話です。僕は物語における面白いには、大きく3つの方向性があると思っていて、それは「気持ちがいい話」「感動する話」「価値観が転換する話」です。

 それぞれ細かく色々思うところはあるのですが、読者がその漫画を読む前と後を比較して、気持ちよくなった、感動した、価値観が変わった、などを思った場合、読者はそこに価値を感じるため、今後も読み続けてくれる可能性が高くなると僕は考えています。それを効果的に読者に伝えるためにこそ、お話の構成や情報の出し方、言葉の選び方、キャラクターやどのように絵で表現するかなどの沢山の要素があると思います。

 

 面白い漫画を描く方法については、僕はまだまだ浅いところで試行錯誤中なので、何も偉そうなことは言えませんが、少なくとも付き合いのある編集さんたちには、僕の描く漫画が描き重ねるうちに良い方に変化していて、それがいずれ大きな結果に繋がるかもしれないという中年の伸び代を足場にして今仕事をもらえているように感じています。

 

 言いたいことは、「賞をとる」とか「デビューする」とかは実はそんなに重要なステップではなくて、自分の漫画を例えば100万人の人が買ってくれるだろうか?そこまでは望まなくても何千何万人の人がこの漫画を買いたいと思うだろうか?そのために、ここにはどのような面白さがあって、それは想定読者にちゃんと響くだろうか?という先々を見てやっていくと、中間ステップとして、何らか先に繋がっていくように思います。

 自分の描く漫画がなんらか読者にとって、お金を出してでも手元においておきたいものになるだろうか?というところが凡才が商業誌で描く上ではとにかく重要だと思っていて、そんなことより自分の表現を追求したいとかであれば、同人誌でもネットでもいくらでも描けるわけなので、そっちでも全然いいと思います。漫画が描けるだけで楽しいですよ。

 漫画を描いて年に4回コミティアに出るだけの時期も僕は毎回すごく楽しかったですし、今もコミティアに適当な漫画を描いては参加し続けているわけですからね。

 

 …と書いてみましたけど、この文章がアドバイスと求めた人の参考になるかはやっぱり分からないなと思いました。