漫画皇国

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AIが自動生成で創作する未来関連

 AI技術の進歩が、色んな新しいものを生み出していて、例えば文章の続きを描いてくれるAIなども出てきています。またゲーム等ではそういった自動生成の試みは昔からされていて、例えば3Dの背景も、ひとつひとつ手作りするのではなく、ある程度条件を指定すると自動生成する仕組みがあったりして、僕が最初にその話を読んだのはシェンムー2でシェンファとともに山道を歩くシーンがそうやって作られたという話でした。

 ゲームの世界は技術の進歩に合わせて広くディテールが細かくなり、膨大なリソースを要求されるようになっているので、もはや人の手だけで全てを設計することが難しく、どんどん機械によって自動生成されたものがその下支えをしていくのではないかと思います。

 人間は機械と連携することによってその創作力を倍増させることができます。

 

 さて、今後の技術の進歩によって、創作性の核の部分にどれだけAIが入ってくるのだろうか?という想像があります。

 

 僕自身の経験では、自分のツイートを切り貼りして新しいツイートを作るサービスを、面白がって使うことがあります(その仕組みはいわゆるAIではないですが)。それは過去の自分のツイートから、意味の繋がりは考慮されず、ただ、言葉の繋がりだけが一見まともそうに見えるように切り貼りされた文章なのですが、ときおり、その文章からハッとするような意味を感じるときがあって、それを面白く感じます。

 

 つまり、おもしろさというものの本質的価値については、見る側が持っているもので、それがどのような意図で生成されたものかについては、あまり重要ではありません。そのような自動生成ツイートについては、意図はそもそも無だからです。

 もし、AIによる創作が高度になってきたとしても、この部分は本質的に同じなのではないか?と思うところがあります。つまり、生成はできるものの、それが面白いかどうかを判別するのは結局、それを見た人間の側だということです。

 自動生成で上がってきたものに対して、それが「良い」か「悪い」かを判別することが、創作をするということと限りなく近くなってくると考えると面白い感じがするなと思いました。

 

 ただ、これは別に特異な話でもないなと思っていて、例えば映画監督などは昔からそういった要素のある職種だと思います。監督は、企画を立てなくても、脚本を書かなくても、撮影をしなくても、演者として出演しなくても、編集を自分でしなくても、監督は監督です。つまり、監督とは、誰かが作ったもの対して、それぞれ「良い」と「悪い」を判断する機能さえあれば成り立つものです。

 もちろん、それぞれの分野に足を踏み入れても監督は監督です。ただそれは、自分の判断する良し悪しにどれだけ具体的に干渉して至るか?という話であって、やらずにそこに至る道筋もあるということだと思います。

 こう考えていくと、映画の要素における個別の良し悪しを語るファンというのは、監督に求められているものと同じ役割をファンながらにしてやろうとしているのだなという理解になります。ただし、ファンはあくまでファンであって、監督ではありません。なぜなら監督ではないからです。

 

 しかしながら、もし色んな要素をAIが自動生成してくれる世の中になると、様々な良し悪しを判断するファンと、監督の間の垣根は限りなく小さくなるのではないかと思いました。AIが自動生成する脚本の中から良いものをより分け、それを映像に自動変換してくれるものの中で良いものをより分けていけば、作品は完成するかもしれません。

 そうなってくると、今までの監督という立場は、様々な人が関わってくれる以上、椅子の数が限られていて、その椅子が一部の何らかの理由で選ばれた人に独占されていただけであるという理解になり、同じような能力があったとしても、座れる椅子が少なかったため座れなかっただけの人たちにチャンスが巡ってくる可能性があります。

 

 これは希望がある話であると同時に怖くもあって、今までなら自分は監督ではなくファンであるのだから、好き勝手に自分は監督よりもセンスがあるとばかりに、この脚本がだめ、このカメラがダメ、構成がダメ、企画がダメと好き勝手言えたものが、その言葉そのままに、じゃああなたのセンスで映画を生成してみましたという話になるかもしれません。

 そして、それが全然おもんないと言われてしまったり、誰にも見向きもされなかったら、これまでは無傷でいられたのに、それが他人から評価される土俵に上がってしまうため、めちゃくちゃ傷ついてしまうかもしれません。

 

 さて、漫画も自動生成が上手くハマるような領域はあると思っていて、それによって、今後、今まで漫画を描けなかった人も描けるようになるかもしれません。

 僕自身既に作画に対して機械の恩恵を強く受けている部分があって(AIではないですが)、iPadクリップスタジオによるサポートがなければ、漫画は描けないだろうなと思っています。

 例えば僕は全然パースがわからないのですが、3Dモデルを使うと、頭の中でこねくりまわさなくても、一定の理屈の中での正解が見られるので、めちゃくちゃ助かるなと思ったり、最近は写真をうまい具合に加工して取り込むことも試しています。

 

 ただし、絵のサポートは機械から受けていても、お話を作ったりそれを演出するという部分に対しては、まだ全て人力です。でも、そこの部分にも、あと何年もしないうちにAIによるサポートが入ってくる可能性は全然あるのではないでしょうか?

 

 例えばジャンプ+の公開している「World Maker」というアプリでは、シナリオをネームに変換する部分をある程度自動化するという試みをしています。ネーム作成にもある程度の法則性とパターンはあると考えていて、その部分を蓄積なしに利用できるのであれば、ネームの描き方が分からないという人に対してのネーム作成のハードルが下がるかもしれません。

 例えばシナリオの中の、どの部分を強調したいかを支持することで、コマの大きさや配置を自動調整してくれれば、仮にそのままでは使えなかったとしても、そこから改善するための最初の叩き台としては有用かもしれません。

 

 人間は叩き台があれば、それにダメ出しをするのは気軽にできたりしますが、そもそもの叩き台を作ることがかなり面倒だったりします。そのハードルをAI等による自動生成がサポートして下げてくれれば、創作のスピードが跳ね上がるかもしれません。

 

 ネームをやるたびに、ネームを明確な指針を持って作る方法が全くわからず「ひたすらこねくり回していたらなんとかできる」、みたいな感じなんですが、そのように全く再現性のあるやり方が見つかっていないので、なんらかAI様が助けてくれよ…という気持ちがあります。

 何度か書いていますが、僕は自分の作者としての力量は信用していませんが、読者としての力量には「自分の面白いと感じるものがちゃんと分かる」という意味で信用しているので、とりあえず叩き台として最後までは描いた自作を読み返すことでの読者力で漫画を作っており、それは、AI自動生成に対しても同じようにできる気がするし、自分に向いているのでは??という予感があり、そういったものを渇望しています。

 もう何年もすれば当たり前にそれがあったりしませんか?してくれ。