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「運命の巻戻士」を無料公開チャンスにまず読んでほしい関連

 コロコロコミックで連載中の「運命の巻戻士」がめっちゃおもしろいです。今全話無料公開期間なのでオススメのためにこの文章を書き始めました。

 

www.corocoro.jp

 

 運命の巻戻士のお話の立て付けは、巻戻士という、時間を巻き戻して目の前の状況に何度もチャレンジできる人たちが、人を救おうとする物語です。

 主人公のクロノは巻戻士に助けられた少年です。そして、妹を助けられないという現実を前にして、自身も巻戻士になる道を選びます。いつか自分の力で時間を巻き戻し、妹を助けられるようになるためにです。

 

 この漫画の良いところは、幾多もの困難を前にして挫けない人間が描かれることです。時間を巻き戻して何度もチャレンジできるということは、実はとても苦しいことです。なぜなら、1回しかなければ、上手くいかなくても仕方がないこととして諦められるものを、巻き戻せるがゆえにベストの答えに至るまでは諦められないからです。そこで諦めるということに対する責任が、巻き戻せるがゆえに大きくなります。まだ頑張ればやり直せるのにやり直すのを止めたのか?という目線がそこにあるからです。

 

 一方で、巻き戻せるということは当然幸運なことでもあります。一度しかないなら諦めないといけないことを諦めないで済むからです。一度や二度の失敗をしたとしても、自分が至りたい答えに至るために何千回と同じ状況を繰り返すことができます。それを続けられる信念さえあれば。

 

 これは特に子供をターゲットとした漫画として、良いものだなと感じていて(おじさんはすぐにそういうことを思ってしまう…)、失敗を恐れてチャレンジをしないのではなく、何度失敗してでも自分が至りたいところまで工夫を重ねて頑張ることを諦めない、という主人公の姿が描かれ、それを良いものとして受け取れることは、人生にとって、とてもプラスの感覚だと思います。

 もし何かを目指しているなら、そこでの失敗は終了じゃなく、上手く行くところに至るためのスタート地点です。失敗は、まず今の時点で何が上手く行かないかを確認できる貴重な体験です。

 こういうのはゲームを遊んでいても気づけるものですが、漫画の物語の中に組み込めることでよりわかりやすくなります。色々最初からは上手くいかない人間が、何度失敗しても反省して再チャレンジしてついに上手くやれるようになること、それがあるということを実感できるのがこの物語の素晴らしいところだなと思います。

 

 そして、本作においては個人的に21話がめちゃくちゃ良かったので、そこまでとりあえず読んでほしいので、まず読んでください。

 

 読みましたか?

 

 もしくは読む気がないということかもしれません。それならば、ネタバレを含んだ解説をするのでそこで読む気になってほしいと思います。21話ではある敵との戦いの決着が描かれます。その敵はとても大きな絶望を抱えていて、それゆえ巻戻士を憎んでいて、強く、主人公たちはそいつになかなか勝つことができません。しかしそんな敵が、ついに主人公に敗北します。

 そして、敗北と同時に命も助けられたその敵は、あることに気づき主人公に問います。

 

 「何回目だ!?アタシは…何回死んだ!?」

 

 そう、その敵にただ勝つだけであれば、実は主人公たちはとっくに成し遂げていたことが分かるのです。しかし、それまでの勝ちは同時にその敵の死も意味していました。だから主人公にとってはそれは成功ではなく失敗だったのです。

 これまで描かれてきた「全員助ける」ということが主人公にとっての正しいクリアルートだということを思い出せば、その助ける「全員」には敵も含まれていたということが、「何回目だ!?」の一言で瞬時に理解できるという話なんですよね。

 

 ここ本当に良い場面で、今の主人公は、自分の妹が犠牲になったその先の未来に居ます。それを助けてみせるのが目的です。誰かを犠牲にした先の未来に対してNOをつきつけてやることこそが主人公の信念です。

 この場面で、主人公の目的を再確認できること、主人公はこういう人間であるということを実感させてくれるところ、そして助ける対象から敵を除外しなかったことこそが、敵の心に刻まれた大きな絶望から救い出せる方法であること、つまり、この物語の小目的、大目的、エピソードの完結、登場人物たちの感情と信念、すべてが集約した一手がここで打たれるので、前回の無料公開時にここを読んだとき「なんていい漫画なんだ!!!」という気持ちになり、すぐに既刊を全部買いました。

 

 人の想いと信念、熱さが、読んでいて本当に心に来る上に、様々な要素がめちゃくちゃ上手く構成されて分かりやすい漫画なので、この無料チャンスに是非読んでみてください。