漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

漫画の仕事と会社の仕事のしんどさの違い関連

 「ゴクシンカ」の連載が始まったのが2022年4月12日なので、毎月〆切が来る兼業漫画家生活も明日で1周年という感じです。厳密には連載開始前の描き貯めがあったので、そのしばらく前から漫画は日々描く生活をしていましたが。

 今のところは、描き貯めた余裕を少しずつ食いつぶしてはいるものの、休載をすることは1回もなく、落ちるか落ちないかなどの〆切ギリギリで追い詰められるなどもない、比較的精神に余裕のある進行を続けられています。

 

 この辺の話、会社員と漫画家の兼業って大変なのでは?と心配されることが多くて、でも、体感としてはそんなでもないです。そんなでもないために、ヤングキング不定期で載っていた「ひとでなしのエチカ」も隔月で連載できるという計算になったので、連載2本体制にしました。

 

 漫画の仕事は淡々とやれば終わるので、個人的に心が楽です。漫画を描いて進捗管理表をアップデートすると数字で達成感を感じて癒されます。念のためですが、そう感じているのは、別に漫画の仕事を侮っているわけではないです。僕の今の会社の仕事がとにかくやったら終わる、という性質ではないものが多くて、日々狂いそうになりながらやっているという話です。

 会社の仕事を、こんなことではもう狂ってしまう!狂ってしまう!おれはおかしくなってしまう!!!と思いながらやっているために、そちらの精神的疲労感がすごくて、漫画のしんどさは相対的にほぼ感じられない状態になっているのだと思います。

 

 会社の仕事で何がそんなにおかしくなってしまいそうなのかについては、具体的な話はできないのですが、そのざっくりとした理由のひとつは世の中にまだない領域で新しいことをやっているからです。既定のプロセスがないものについて手探りで進めながら、それをまずはマニュアル化をしつつ、新しい何かが出てくるたびに改定し続けています。

 仕事の計画においても、まだ確定していない他のパートナーとの連携関係や契約を進めながらも、同時に独自に開発や検証を行っていて、それらを上手くハンドリングしながら成果を出していくので、最初に立てた計画の通りに進められるような仕事ではないんですよね。

 

 僕がTwitterなどで時折奇声を上げて苦しんでいる様子を見せるのは、大体そういう同時並行で動いているものの連携が上手く行かなかった部分で起きていて、つまり、賽の河原でなんとか積み上げた石を、外的要因によって崩されたショックを受けている状態です。奇声は、そこで精神が停滞する状態を迅速に抜け出し、またイチから積み上げ直し始めるための切替作業です。

 

 短いループで、スケジュールとリソース割当と進捗状況を確認し、目標に合わせてそれらを微修正をしたり、ときに大きく計画変更をしたりし続けています。それ以外に、もしなにか不測のことがあったときのための準備も裏でやっています。そして、途中で何が起きても、当初の目標はだいたい動かないままで評価をされます。結果で見られます。途中で大変だったかどうかは、あまり評価の対象になりません。

 自分の評価だけならもう低くてもいいやと諦めるという方法もありますが、僕が持っているチームのメンバーの評価も下がる可能性があるので、それもできません。

 

 メンバーの評価を上げることも自分の今の仕事であるために、裏側では自転車操業のように人と物と金のリソースをやりくりして割当直しをしまくり、なんとか回し切ることで上に対して、おれはやりましたよと上に主張をしているという状況です。

 

 順調に進んでいたはずのものが、何らかの理由で全てやり直しになるということは、今のところ漫画の仕事では起こっていないので、漫画の作業はやればやるほど順調に右肩上がりに進捗していくため、持続的な達成感を得られます。

 一方で、会社の仕事は全然そうではないので、常に頭の中が何か見直すことはないのか?という考えでいっぱいになってしまいます。そうなってくると、自分の精神が自分の自由にならなくなり、頭の中身が会社の仕事をいかに問題なく回すかという部分に最適化してくるので、自分は大きなものを動かすための部品として生きているんだなという認識が深まってきます。

 

 そういう精神の限界綱渡り、みたいなことをしているので、漫画の仕事をやっていることで精神的には助かっているんですよね。会社では、一番楽しいところである自分の手を動かす作業も、リソース配分の都合で、もはや自分ではできずチームのメンバーにやってもらうことになる昨今です。

 なので、自分だけで完結して達成感を得られる漫画の仕事があることに、精神衛生上とても助けられています。

 

 会社の仕事には本当に精神をゴリゴリ削られることが多いので、人に話すと「さっさと辞めろ」と言われることも多いのですが、個人的には今はまだ仕事ができているので大丈夫かなと思っていて、それよりもこの経験を通じて、この耐え切れないような状態に耐えれるようになれたら得だなと思っています。僕の心が壊れるか耐えきる心を手に入れられるかのチキンレースになっていますが、少なくとも去年よりは精神的にはマシになってきました(去年一回やったことも増えたので)。

 

 このまま全てを平常心で回せるところまで行ければ生活が楽になる上に収入もダブルで潤沢に確保できるので、今辞めるよりも、楽になる可能性に賭けてやった方が得だなと思っているという価値判断です。なので、しばらくはこのままかもしれません。でも、急に全てが嫌になって今の会社を辞める可能性もあります。未来は?果たして??

 

 漫画は漫画で別のしんどさもあると思うんですよね。一人で仕事が完結するために、最悪自分が動けなくなったときに他人がやってくれるみたいなことがありません。結果についても自分が描いたものを世間に投げて、跳ね返った結果を自分で引き受けないといけません。そこには何の言い訳も意味がありません。

 

 自分が描いたものが世間に知られて受け入れられなければ当然売れませんし、売れなければ新しい仕事も来なくなるでしょう。そうなれば収入はゼロですし、生きるために、本を売るためには何をしないといけないかを常に考え続けないといけないかもしれません。

 その部分が、会社員の安定した収入があることで今は別に精神的負荷になったりしていないので、今の状態がバランスが良いとも言えるんですよね。会社の仕事の辛い部分を漫画の仕事が補ってくれていて、漫画の仕事で辛いことを会社の仕事が補ってくれています。

 

 バランスが良い状態だからこそ、そこから抜け出せないことが問題になることもあるかもしれませんが。

 今日も会社でまた新しい仕事が来るらしく、やりますよと上司には答えたので、それも頑張らないといけません。頑張ら騎士(ナイト)。