漫画皇国

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課長の仕事をなんとか1年やれた関連

 むかし、「技術者として生きて行ければいいな」と思ったのは、技術の1点で他の人より秀でていれば、社会の中に居場所を得られると思っていたからです。僕はコミュニケーション能力とコミュニケーションに対するモチベーションが低く、ひとりで過ごすことが多い子供時代でした。

 

 まったく人と遊ばないわけではないですが、人と一緒にいてもひとりになりたいと頻繁に思いますし、一人で本を読んだり、自転車で山を登って景色を見たりしていると落ち着きました。

 

 そんなことをしていると、対人関係能力が向上しませんし、しないことから余計に社会に苦手意識が出てきます。社会が向いていないな…とずっと思っていましたが、とはいえ社会に属さず、たった一人で生きて行けるほどの力もありません。社会には向いていないと思いつつも、それでも社会にしがみつかないといけないわけです。

 

 なので、学生のときには「人も社会も苦手でも、1点だけでも他の人より秀でたところがあれば生きて行けるかもしれない」と思っていました。大学で専門技術の下地を作り、実験をして論文を書いて発表して、賞を貰ったり外国に発表に行かせて貰ったりしたことで、就職希望を出している会社に「こいつは色んな経験をしている」と思い込んで貰うことで潜り込むことには成功しました。

 

 それによって、人が苦手でも生きて行けそうだなとある程度思えるようになりました。そこから十数年働いて、対人関係能力はいまだに割と低いままですが、技術的なことであれば人から相談もされますし、その期待に応えていれば、なんとなく仕事関係の居場所がありますし、居場所があれば給料が出ます。

 

 1年と少し前に、当時の会社の役員から「課長になる気はあるか?」と聞かれました。人が苦手なので無理だと思いますと言い、自分にその適性があるとも思えないと答えました。

 でもそのとき、その人に言われたのは、そういう認識の方が、無邪気に「管理職になりたい」なんて言う人よりもよっぽど適正あるよ、という話でした。管理職になったら何をしないといけないか、そしてそれがどれほど大変なことかを既に具体的に思い描いているから、という理由からです。

 確かに、自分が何をすべきかを把握していない人に上司になられた場合にとても苦労するということは、これまで経験していましし、上司にはこうあって欲しいという気持ちは自分にも色々ありました。ならば、上司が自分の要望の通りに動いてくれないという不満をただ抱えるよりは、自分でそれをやった方がいいかもしれないと思いました。もういい歳なのだから、他人が自分の思った通りに動いてくれないという不満を抱え続けるのもよくないなと思った感じです。

 

 苦手なことを忌避していてもずっと苦手なままです。コミュニケーションを最小にして乗り切っていたら、ずっとコミュニケーションから逃げ続けなければなりません。なら一度頑張ってみて、自分がどこまでできるのかを試してみるのものいいなと思いました。それで、もし出来る領域が思っていたよりも広いことが分かったら、その後は忌避するエリアが少し狭められるなと思うからです。

 

 課長になるとほぼ同時に、兼業で漫画を連載開始することになりました。タイミング的にこんなことある?と思いましたが、両方やるしかないと思いました。両方とも一度やってみようと思ったからです。

 その後の様子はTwitterなどを見ていれば皆が心配してしまうように、ずっと苦しみながら課長の仕事をしています。それでも、3月末締めの仕事について全てはなんとかなりました。1年はどれだけ苦しくても課長の仕事をやり抜こうと思っていたので、やり切った満足感があります。

 

 1年やった手ごたえとしては、「やっぱり向いていない」ということです。無力感も沢山ありましたし、なんとか仕事を終わらせた以外のところには無数の後悔があります。

 

向いてない部分を列挙するとこの辺りです

・他人に任せるのが下手で、なんでも自分でやろうとしてしまう

・なんでも割と許してしまうので、計画を他の人に力技で守らせることができない

・現状を受け入れるところから始めるので、貧乏くじの案件を引き受けてしまう

・人と何気ないコミュニケーションをとるモチベーションが低い

・空気読みが苦手でローカルルールの把握に時間がかかる

 この向いてなさがあるとどうなるかというと、自分が責任を持つ範囲の仕事が膨れ上がります。僕は担当者としての立場の頃から過労働には慣れているので、僕自身は増えた仕事を運動量でカバーをするのですが、リーダーとして引き受けるなら、僕だけの話ではないので、担当者だった頃の感じで動いていてはいけないなと思いました。

 

 あまり細かい話は具体的過ぎるので書けませんが、個人として動くのではなく集団として動くということが上手くできなくて試行錯誤の連続でした。それでもウチのメンバーの人たちは優秀な人たちばかりなので、僕が事細かに指示をしなくても自律的に動いてくれて、本当に助かりました。

 今年なんとかなったのも自分の力とは今のところ思えないですね。色んな人が動いてくれたので、その支援や後押し、隙間を埋めるような仕事をしていたら、なんとかなってくれたという認識が近いです。

 

 今は一旦終わったので少しの達成感と解放感がありますが、人間は上手くできないことの前に座り続けると、精神がどんどん重たくなっていきます。ずっとそうでした。

 

 この1年は、漫画の連載が始まってくれていてすごく助かりました。本当に嫌になったら漫画の収入もあるのだから仕事はさっさと辞めて、漫画だけやってしばらくのんびりしたって生きていけるんだとも思えたからです。

 ここにしか居場所がない、ここに必死でしがみつかなければならない、と思っていたらプレッシャーが大きすぎてもっと辛かっただろうなと思います。

 

 どんなにしんどくても1年は頑張るということはまず達成できたので、まあ良かったですね。4月からも課長を続けますが、目標は達成したので、辞めどきがきたと思ったら辞めようかなと思ってますし、この1年でも人を頼ることで上手くいくという成功体験はいくつか積めたので、段々と続けることの苦痛も減っていけば続けてしまうかもしれません。

 

 自分がこれまでの上司にこうしてほしかったマネジメントを自分でやってみようと思ったことについては、色んな学びがあって、その人たちがやってくれなかったのは、それをちゃんとやることがとてつもなくしんどいからだろうなという実感が生まれました。でも、こういうのをしんどくなくやれる環境が会社に作れたら、割と仕事環境が良くなるんじゃないかなと思うので、そういう部分には頑張ってみたい領域があります。

 

 こうあって欲しいと思った時に、そうでないことにただ怒るのではなく、そうあってくれないかなとただ願うのではなく、自力で近づくことができるような立場になってきたので、そういうのを頑張って、できないことへのコンプレックスと苦痛が減れば、日々の労働も生活も今より良くなるような気がします。

 なので、まあもうちょっと頑張るかなという気持ちになっています。