漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

「将太の寿司」が好き過ぎてついには将太の寿司の登場人物になった男の話

 まずはこれを見てください。これは僕です!「将太の寿司」の登場人物になった僕です!!

 

 ここから長い話が始まります。

 寺沢大介先生の「将太の寿司」が好きです。

 

 僕は「ミスター味っ子」はアニメの再放送から入ったのですが、「将太の寿司」はちょうど僕がマガジンを毎週読むようになったタイミングと重なるリアルタイム世代なので、その後の全国大会編まで毎週読んでいました。もちろん「将太の寿司2」も読んでいます。

 

 将太の寿司はずっと好きで、寿司に関する色々な知識の元の多くは将太の寿司から得ています。ただ、よりいっそう好きになったのは、大人になってから読み返したときで、特に、大和寿司の親方のエピソードを読んだときに、子供の頃には分からなかった心の機微を強く感じられ号泣してしまい。あとは全国大会編最後の笹木のエピソードも、物語の終わり方も、本当に最高で、最高の漫画だなと思っていました。知っていますか?将太の寿司は、生きるための寿司なんです。

 

 僕と寺沢大介先生の出会いは、銀座で開催された原画展です。Twitterで日常的に将太の寿司の話をしていたところ、原画展のアカウントにフォローされ、そこから、原画展に合わせた将太の寿司の再現寿司が食べられるイベントの開催を知りました。これまで漫画の中で想像はしていたものの一度も食べたことはなかった数々の寿司について、実際に食べられるなら行ってみたいと思って申し込み、寿司を食べに行きました。

 これは当時の日記です。

mgkkk.hatenablog.com

 周りは当然知らない人たちばかりの中、恐縮しながら寺沢先生に日本酒を注いで頂き、アワビのとろろやら、芽ネギやらのこれまでフィクションの中だけの存在だと思っていた寿司を食べられてよかったです。

 そして、原画展に足を踏み入れると、そこでは本物の原画が一枚たった千円で売られており、嬉しくなって好きな場面の原画を十数枚買ったと思います。そして、それによってサイン会への参加の権利を得ました。

 

 サイン会では好きな絵を描いて貰えるということで一週間考え続け、サイン会の会場に行くまでも悩み続け、これは号泣しながら読んだ、大和寿司の親方が将太くんにプレゼントしてもらったネクタイを締めているところだろうと思いました。寺沢先生にリクエストに応えて貰ってサインを描いて貰える機会など、おそらく一生に一度だろうから、一番好きなのをリクエストしないとダメだ!どれだけ恥ずかしくても一番好きなのを言おうと思ったのです。

 

 会場では待ち時間にまた原画が買えたのですが、そこにはちょうど大和寿司の親方の初登場の場面の原画があり、これはもう運命だなと思って買った記憶があります。随分前に連載が終わった漫画のサブキャラクターですから、どんな顔だったか覚えていなくても、これを見せればいいんだと思ったからです。

 

 ドキドキしながら順番を待ち、何を描いてほしい?って聞かれて、おずおずと「将太くんに貰ったネクタイを締めている大和寿司の親方を…」と口に出すと、「それは誰だっけ?記憶で描けないから、他の人は味皇や将太を頼んでいるからそうにしたら?」ということを言われたので、「そんなこともあろうかと、先ほどそこで原画を買いまして…」と袋から原画を出すことで反論を封殺し、「こんな描きなれてないものを描かせて!」と小言を言われながらも「すみません…でも好きなので…」とうわごとのように繰り返し、「このアナゴの親方だけでいいの?将太とかは?」と聞かれたので、「将太くんもお願いします…!!」と圧をかけて描いて貰い、無事念願のサインを入手することができました。

 

 このときは念願のサインを描いてもらった嬉しさと、迷惑なリクエストを欲望のままにしてしまったという反省が拮抗しており、ただ、家にあるサインを見返すたびに、勇気を出して頼んでよかったなという気持ちを強めました。

 

 その後、将太の寿司がネットで無料公開されるタイミングがあり、僕はあまりに将太の寿司をみんなに読んで欲しくて、いい話をピックアップして教えたり、おもしろいよという話を色々し続け、そして、最後に勝手な総括ブログを書いたりしました。

mgkkk.hatenablog.com

 

 そして、ネットで盛り上がったその追い風もあってかユニクロ将太の寿司Tシャツを出したときにもはしゃぎまくって購入してはその顛末をブログに描いたりしつつ、僕の勝手な将太の寿司ファン活動は続いていきます。

mgkkk.hatenablog.com

 

 当時は寺沢先生と話す機会などもうないだろうなと思っていましたし、サイン会では迷惑をかけたなという気持ちもあり、できれば認識すらされない領域にいたいと気持ちが強かったです。それは、関わってマイナス評価を積み増すぐらいなら、虚無の方がましという価値観で、僕は基本的にそのように生活をしています。

 

 その後、会社員をしながら兼業で漫画家をする機会に恵まれました。Twitterエゴサをしていると、寺沢先生が僕の漫画に言及してくれていた人に話しかけているのを見つけてしまい、しかも発言内容から、これまでのファン活動も認識されていることが分かったので、逃げている方が失礼だなと思い、「ありがとうございます」と挨拶させてもらったことから、やり取りをさせて貰う感じになりました。

 

 その後は大変良くして頂いていて、イベントで一緒に登壇させてもらったり、一緒にお寿司を食べに行ったり、なんと同人誌を作ってコミティアに出るとおっしゃるので、ご一緒させてもらったりと、生きててこんなに良いことあるかなと思っていました。

 でもさらにその先があったんです!!

mgkkk.hatenablog.com

 

 それでもう一回これを見てくださいよ!

 

 これは僕なんですよ!僕が将太の寿司の登場人物になっているんですよ!!将太の寿司が好きすぎるあまりについには将太の寿司の登場人物になることができました!!しかも笹木の家庭教師です。こんないいことありますか?????

 人間は生きていると色んな良いことがありますよ。まさか自分が子供の頃読んでいた漫画の世界の中に生きる人物になるとは、そこに自分がいたとは思わないじゃないですか!

 人間は生きていれば将太の寿司の登場人物になることもあります!

 

 ということで僕が登場する本「SSSS-笹木は寿司の夢を見るか-」を皆さんも買って、この世にも奇妙な、将太の寿司が好き過ぎるあまりに将太の寿司の登場人物になった男の姿を確認してみてください。

https://www.melonbooks.co.jp/detail/detail.php?product_id=2058736

 

 老人は暗然として押絵の中の老人を見やっていたが、やがて、ふと気がついた様に、

「アア、飛んだ長話を致しました。併し、あなたは分って下さいましたでしょうね。外の人達の様に、私を気違いだとはおっしゃいませんでしょうね。アア、それで私も話甲斐があったと申すものですよ。どれ、兄さん達もくたびれたでしょう。それに、あなた方を前に置いて、あんな話をしましたので、さぞかし恥かしがっておいででしょう。では、今やすませて上げますよ」

 と云いながら、押絵の額を、ソッと黒い風呂敷に包むのであった。その刹那、私の気のせいであったのか、押絵の人形達の顔が、少しくずれて、一寸恥かし相に、唇の隅で、私に挨拶の微笑を送った様に見えたのである。老人はそれきり黙り込んでしまった。私も黙っていた。汽車は相も変らず、ゴトンゴトンと鈍い音を立てて、闇の中を走っていた。

 十分ばかりそうしていると、車輪の音がのろくなって、窓の外にチラチラと、二つ三つの燈火が見え、汽車は、どことも知れぬ山間の小駅に停車した。駅員がたった一人、ぽっつりと、プラットフォームに立っているのが見えた。

 「ではお先へ、私は一晩ここの親戚へ泊りますので」

 老人は額の包みを抱てヒョイと立上り、そんな挨拶を残して、車の外へ出て行ったが、窓から見ていると、細長い老人の後姿は(それが何と押絵の老人そのままの姿であったか)簡略な柵の所で、駅員に切符を渡したかと見ると、そのまま、背後の闇の中へ溶け込む様に消えて行ったのである。

江戸川乱歩押絵と旅する男」より)