漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

合法の無料と違法の無料を見分ける難しさ関連

 昨今、漫画がネットで無料が当たり前の雰囲気も出てきた気がしており、色んな漫画が(期間限定であったりはするものの)、合法的に無料公開されたりもしまくりな昨今です。

 

 無料というのは摩擦がないみたいな感じなので、情報としての流通が爆速になります。誰でもリンクをクリックすればすぐに読めるからです。会員登録をしたり、決済手段の登録をしたり、お金を支払ったりすることなく、ネットに繋がる端末さえあれば簡単に読めます。人から人に広がりやすく、沢山の人が読むようになります。だから有料の場合と比べてすごく沢山読まれるようになりますが、問題は読者にとっては無料なので、読まれることそのもので収益を上げることには向きません。

 つまり、もう既に市場ではあまり動かなくなった古い漫画に広告をつけることで少額でも収益化することや、アニメ化やドラマ化、あるいは新刊発売に伴うプロモーション的な意味で、それ自体が広告になることなどが理由として読み放題になることが多いと思います。

 読み放題そのものから大きな利益を得るのはまだ確立した方法がありません。

 

 さて、漫画がネットで無料というと、違法な手段でもそれが行われることがあります。むしろ、そちらの方が目につきやすいかもしれません。今でも漫画のタイトルと一緒に検索されている単語には、違法アップロードされた作品を探すための言葉であることも多いですし、この前話題になった漫画村などもそうでしょう。

 無料で読み放題というものは、漫画を作っている人に収益として還元されることを無視すれば、誰でもいつでも大量の漫画を好きなだけ読める、自由で便利で豊かな環境が提供できる素晴らしいものかもしれません。僕自身合法なものについては、嬉々として色んな人に読んでもらおうとしているので、そのメリットは分かります。でも、それはやっぱり違法な手段で行われていてはダメだと思うんですよ。それは持続可能ではないから、あるいは、持続するために誰かを踏みつけ続けるものだからです。

 無料で公開するということに沢山のメリットもあるとは思いますが、それはある種の損害もある行為なので、もしそれをやるならば、作者が自分の意志をもってするということが大前提になる必要があるのではないでしょうか?

 

 さて、同じようなものを提供するにしても、「作者の意志を伴った合法」ならよく、「作者の意志を無視した違法」ならダメという基準があったとします。しかしながら、何が合法で何が違法であるかということを見分けることはそんなに簡単なことでしょうか?

 

 以前、マンガ図書館Zで「皇国の守護者」の漫画版が公開されるということがありました。僕はSNSでそれを知りましたが、これはおそらく違法だろうと思ったので言及はしませんでした。ではなぜ僕はそう思ったのでしょうか?マンガ図書館Zは、絶版になった漫画に広告をつけて合法的に公開をしているサイトです。ならば、合法的に公開されたと思ってしまっても仕方ないかもしれません。

 当時の僕が、これは作者の許諾によって始まったものではないのでは?と判断した根拠は2つです。ひとつはマンガ図書館Zは漫画におけるYouTubeのようなものを目指すと宣言しており、著作者以外の人間がデータを上げて公開できる仕様となっていたことです。参考までに、このような仕組みは、いくつかの条件を満たせば、違法ではありません。なぜなら、プロバイダ責任制限法においては、このようなアップローダに上げられたデータに対して、著作権を侵害していることの指摘があった場合、速やかに対応してデータを消しさえすれば罪に問われないことになっているためです。事実、YouTubeも著作者以外が勝手にアップロードしたデータが溢れていますが、違法サイトとは扱われていません。それと同じです。

 ここで言いたいのは、マンガ図書館Zで公開されているからといって、必ずしも合法とは限らず、違法だがまだ指摘されていないだけの可能性があるという前提を僕が持っていたことです。

 もうひとつの根拠は、「皇国の守護者」の漫画版は、以前出版社の人から聞いた限り、原作者が自らの意志を持って連載を途中で終了させたものであり、それによって電子書籍版も出ていないというものだったからです。その問題がもし解決したとして、まず行われるのはきっと電子書籍版の販売でしょうし、いきなり無料公開のサイトにアップロードされるようなことがあるでしょうか?

 この2点から、マンガ図書館Zで当時公開されていた漫画版皇国の守護者は、権利者の意志とは無関係に違法にアップロードされたものである疑惑が強く、だから、はっきりするまでは言及することを避けたわけです。

 

 結果的に、話題になってほどなくデータの公開は止まり、上記の推測は細部までは不明ですが大筋は正しかったことが分かりました。

 

 僕はこのような理由から思いとどまりましたが、それを作者の意のもとに合法的に公開されたものと勘違いして宣伝をしてしまった人たちもいたわけですよ。それをダメなこととして非難するような気持ちは僕にはありませんが、結果的に、作者の意志を無視し、権利を侵害する行為を、むしろ良かれと思ってやってしまったということは結構しんどい状況なのではないでしょうか?人によってはこれを「合法で提供しない方が悪い」というような怒りを表明しているのも目にしました。作者の権利なんてどうでもいいという考えの人も当然いるようです。

 一方、漫画版皇国の守護者については、原作者の意向により、漫画家が自分の描いた漫画版の公開を制限されているというしんどい事情があります。なので、色んな思惑が絡まっている厄介な事例です。ただ、基本的に作者の権利を守るという意味では、合法的な動きの結果の状況であり、その解決は個別に交渉するしかないようなものだと思います。漫画版皇国の守護者は好きな漫画なので、そのような状況になってしまうのは悲しいですね(まあ僕は単行本を持っているのでいつでも読めますが)。

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 話がそれましたが、皆さんは合法と違法をどうやって区別しますか?という話ですよ。上記のような理路は特殊なので、パッと見でそう判断するような人は少ないかもしれません。これはなんだか分からないけれど無料で、なんだか分からないけど作者にお金が入ってるんだろ?と思ってしまうことはそこまで不思議なことではありません。例えば、テレビなんてその最たる例だからです。

 

 ネットで無料で読める漫画には、合法なものと違法なものが入り混じっています。それはパソコンやスマホのブラウザやアプリから読めるという意味では違いはありません。それを合法か違法かを区別するのは、その後ろで、適切な権利処理を行っているかの違いであって、それは読者からは見えにくい場所でもあります。

 合法に公開されているサイトだからといって、そこに違法なものが混じってしまうケースもあります。マンガ図書館Zもそうですし、Kindleでも、その漫画の著者ではない人が勝手に登録している漫画も発見することができます。

 だから、100%明確に判断する根拠は、現時点ではないと言った方がいいような気がします。僕自身、あらゆるケースにおいて見分けられるという自信はありませんし、出版社が自分たちでやっているようなこれは絶対合法だろうと思えることでも、実は作者にちゃんと確認をとっておらず、事後承諾となったり、揉め事に発展したりしたケースも見聞きします。それだって違法に分類されるわけでしょう?

 その権利処理の実態が、自分の目の前に公開されているわけではない場合、完璧な確認手段というのはありません。だから、なんらかの合法違法の判断は、何らか適当なものを根拠に、これは本当に合法か?とそれ以上考えることを止めてしまうことによってのみ成し得るものかもしれません。

 

 例えば、子供にこのYouTubeの動画はこのユーザが勝手にアップロードしたものだから違法で、同じサイトで同じ検索に引っかかるけど、これはオフィシャルのアカウントだから合法、ということを上手く説明しろと言われると弱ってしまいます。説明はできても、納得してもらえるかの自信がありません。(なおストリーミングなので、現行法上は視聴自体は違法ではありません)。

 テレビでも無料で流して合法なのに、それがネットになると無料で見るのは違法なのはなぜ?という問いに、誰もが簡単に納得してもらえるように説明ができるでしょうか?それが音楽なら?漫画なら?映画なら?ゲームなら?

 著作物における作者の権利という概念と、それが法律にどのように記述されているか、そしてその解釈は?判例は?それぞれ誰でも即座に簡単に理解できるものではないように思います。だから、一番楽なのは、ネットに上がっていて、それを見ること自体が違法でないのなら、何も考えずに見てしまえばいいというあたりになってしまうんじゃないかと思うんですよね。それが谷の底です。流れた水をせき止めるものがないなら、全て谷の底に流れ着いてしまいます。

 

 その谷に流れてしまうことを前提で戦うなんて方法もありますよ。例えば、音楽そのもので収益が得られないならライブやグッズで収益を得ればいいとか、違法ダウンロードを潰すのではなく、競争をするだとか。合法でもっと安く便利に提供すれば競争力があるとか。でも、個人的には音楽でのそれは失敗しているように見えてしまいます。なぜなら音楽市場は、ネットで無料の圧力がかかるまえと比べてすごく小さくなっているからです。ライブやグッズで収益を上げられるような既に大きくなった音楽家ならいいかもしれません。でも、新人ならどうでしょうか?市場規模というのは単純に食える人の数も意味すると思います。その市場で食べていける人は減っていくんじゃないかと思うんですよね。

 何年か前に行ったバンドのライブで、ボーカルがMCで、「どうやったら音楽で食えるようになるんだ!?」と絶叫していました。そのライブは2つのバンドのツーマンで、片方は早くからネットの生配信などを駆使し(それを見て僕も行きました)、もうひとつは昔ながらのやり方です。「配信とかをすればいいのか!?それで食えるようになるのか?」とステージ上ですごく嘆いていて、今調べてみたら活動休止していました。時代の流れに乗れなかったのが悪いと言うこともできるかもしれません。でも、それは時代の流れというものに乗れないものは、それがどんなに好きな感じの音楽だったとしてもいなくなってしまうということです。それは悲しいなという気持ちがあります。

 そういう意味で、音楽は今のところビジネスとしては特段上手くは行っていないんだろうなという認識です。

 

 でもまあ、ネットによって低コストで全世界に流通させることはできるようになったので、収益化はめったにできなくても、音楽を聞く環境は豊かになる可能性だってありますね。

 

 そんでもって、漫画はどうなるのって話じゃないですか。合法なやつをちゃんとやっていければ大丈夫なのかも不明瞭ですが、でも、音楽みたいに違法なんかと正面から競争して、自分たちの得られるはずだった利益を切り下げていって、収入を大きく減らした状態で「勝負に勝った」なんて言うの、なんか悲しすぎやしないかなと思い、そうはならないでほしいみたいな気持ちがあります。

 漫画も、今は描いてネットで無料で公開している人も無数にいます。それで食うわけでもなく、同人誌を作って楽しんでいる人もたくさんいます。それも別に悪くはないかとも思いますが、僕は商業漫画に囲まれて生きてきたので、それに対する郷愁みたいなものがあるわけですよ。

 

 話を戻します。合法違法の見分け方の話です。漫画を無料で公開しているサイトは出版社直営のものも多く、それは出版社直営なのだからきっと合法だろういう信頼性が得やすいでしょう。では、それ以外の場所ならどうでしょうか?例えば「スキマ」というサイトがあります。このサイトを見て、合法か違法かをどのように判断するでしょうか?

 ネットで「スキマ 合法 違法」なんて検索してみる、なんて方法もあります。Yahoo知恵袋に回答が書かれていたりしますね。でも、Yahoo知恵袋に書かれているから合法に違いない!!と思うのは正しいでしょうか?スキマの漫画のデータを見ると、あまり綺麗ではありませんし、場合によってはスキャンしたページが破れているなんてこともあります。キャプションに誤字が含まれていたり。一見すると怪しさも沢山あるわけです。

 なので、僕は最初サイトを知ったときには多少警戒したのですが、運営会社が普通に商売をしている漫画全巻ドットコムと同じであるということや、オリジナルの連載も行われており、そこでは漫画家のTwitterなんかを見る限りちゃんと仕事としてやっているだろうことが分かります。合法のビジネスをやっている以上、違法性のあるものを公開するのはメリットよりデメリットが多いだろうなどことが推察されます。

 スキャンの品質が悪いのも、漫画全巻ドットコムと関係性があるため、コスト削減のために自前でスキャンしている本があるのかな?と説明できると思いました。あとは、権利を持っている漫画家から指摘がない状態で継続的に公開され続けているので、それならきっと大丈夫だろうという結論に至りました。しばらく時間をかけて。

 でも、結構難しくないですか?その判断。僕は最初結構悩みましたよ。ここが違法サイトなのか合法サイトなのか。

 

 違法サイトにだって「この漫画を読むのは合法です」みたいな書き方がされていたりもします。それを読んで「そうか!合法なんだ!」って思ってしまうことだってあるんじゃないでしょうか?それはすごい雑な話ですが、それぐらいで信じてしまうことだってあるわけですよ。だって、SNSで書き込みされた真偽を確認する手段がまるでない情報でも、すぐに事実として扱われてしまったりもするじゃないですか。

 何をもって信じるか、なんて人それぞれです。詳しい分野では騙されなくても、詳しくない分野ではコロっといってしまうかもしれません。結局のところ具体的に何がどうなら合法なのかを確認するのって、結構しんどいですよね。しんどいからどれだけの人がどれだけやれるかも分かりません。だからもう、しんどい状況だよなあと思ったという話です。

 

 そうなると、ネットを分かりやすくするためには違法サイトをネットからブロッキングしてしまいたいという発想も出てくるよなあと思っており、個人的には立法という筋道と運用の透明性が確保されるなら、そういう解決方法もあるだろうなと思います。ただ、今いきなりそれをやるのは無理筋だとは思いますが。

 

 さて、ようやく本題ですが、僕が大好きな漫画こと「将太の寿司」が、しばらく前からスキマで期間限定無料公開されており、あと2週間弱で読めなくなるそうなので、まだ読んでない人はこれを機に読んでみるのもいいのではないかと思います。

www.sukima.me

 以下は、ご参考までの僕の将太の寿司に対する気持ちの文章です。

mgkkk.hatenablog.com