漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

「お前の漫画全然面白くなかったよ」関連

 漫画を描くようになって何年かの時間が経ってきましたが、僕が描いている漫画への反応として、悪いものもたまに目にしたり、直接伝えられることもある感じになってきました。つまりそれは、もともと好意的に思ってくれていた人以外の色んな人に読まれる感じになってきたということだと思うので、大枠の傾向としては良いことだなと思います。

 

 それに対して言われた僕がどう思うかというと、その人が面白く感じなかったことについては、まずは「仕方がない」と感じています。読書体験は漫画と読者の共同作業なので、同じ漫画でも、人によってその体験の形は様々ですし、僕の漫画が共同作業の相手として合う人もいれば合わない人もいると思うからです。

 ただそこで、面白くなかったと感じた人に、どこが面白くなかったか?を聞くのは興味深いことで、そこに僕が想定していなかった、「そこでそう感じるのか」とか、「そこをそのように理解したのか」という発見があったりします。

 

 それを踏まえて自分の次の漫画を変えたりすることもあるでしょうし、別に変えないこともあります(変えない方が多いかもしれません…)。なぜなら、その人の全て言う通りに変えた場合、その人にはウケるかもしれませんが、別の人には逆にウケなくなるかもしれないからです。

 

 これは肯定的な反応の場合でも同様で、面白いと言ってくれた人がどこを面白く感じてくれたり、どこをどのように受け取ったかを教えてくれた場合でも、その後、その部分をよりその通りにするとは限りません。誰かひとりのためだけに作るのであれば、その人に合わせればいいですが、より多くの読者を想定している漫画については、良いも悪いも色んな感性や意見があると認識した中で、改めて自分として何を選ぶかというところに意味があるだろうと思っています。

 ただ、その結果として、特定の誰かひとりにウケるために漫画を描くのが良いという結論になることだってあるかもしれませんが。

 

 僕の基本の考えとしてはそういう感じです。ただし、「お前の漫画全然面白くなかったよ」という話を実際言われたときには、結構取り扱い注意だなと思うところもあります。それは、その人が「本当に面白く感じなかった」のか、内容は関係なく僕のことを「傷つけてやろう」と思っているのかの区別が必要だと思うからです。

 後者の傷つけてやろうとしての発言の場合、面白く感じなかったということはそれを実行するための手段でしかないので、中身は虚偽であったり、実はまともに読んですらないかもしれません。その場合、言葉の中身をそのまま受け取ると誤解を重ねることになってしまいます。

 

 他人の心そのものは見ることができないので、実際のところ何故言われたのかは正確には分かりません。なので、自分がその疑惑を感じた時点で何らかの判断をすることになります。幸い、僕はもともと他人の感じた個別の意見にはあまり左右されないように心掛けているので、何を言われてもまずは「そうなんですね」と思って終わりということになります。

 

 世の中には、「気に食わない他人を嫌な気持ちにさせたら勝ち」という価値観があると感じていて、僕もそれは感覚としては分かると思います。感覚では分かりますが、少なくとも近年はできるだけそういうことはしないようにしようと思っています。なぜそう思うかというと、そういったことを人々が互いに繰り返していくと、場の空気がどんどん悪くなり、日々居心地が悪い空間になるのではないかと思うからです。

 また、そういったことを他人にされたときについては、どういう態度をとるのがいいのかな?と思います。一番良いのは、そこからどうにかして、その相手に好かれてしまうことでしょう。そうすれば、僕を嫌な気持ちにさせたいというモチベーションそのものがなくなるので、大変平和的です。

 

 なので、できるだけ多くの人に好かれてえと思っています。でも、他人の好悪感情をコントロールなんてできませんからね。なので、なんか嫌なことを言われたりするのは無くならないし、ある程度はどうしようもない気がします。

 

 さて、幸い僕はもうおっさんなので、精神の鈍麻が始まっており、他人にどう思われようともうどうでもいい、という部分が結構あります。けど、自分の若い頃は他人にどう思われるかを過剰に気にしていたので、今の若い人がそういうのに影響され過ぎないといいなと思ったりしています。

 最近は、新人漫画家の読切作品がネットで無料で公開されることが増えていて、人の目を集めることも多くなっているように思います。そういうところに、他人の目を強く気にしてしまう新人漫画家の人がいることを想像すると、勝手に心配になってしまうんですよね。

 

 そういう危惧を抱いてしまう理由としては、毎日次々に流れてくる新人の読み切り漫画に一言を加えていく中で、審査員のような物言いをする人を目にすることがあるからです。つまり、自分個人のの好き嫌いではなく、世間的な良い悪いをジャッジしようとする姿勢です。

 それだってやるのは人の自由ですが、それはあくまでその審査員っぽいことを言う人個人の中での良い悪いの話であって、それに準拠したところで、その人に好かれる、あるいは悪く言われなくなるだけだったりするとも思います。なので、目指すべき場所はその人に言われた通りのそこなのだろうか?と思ってしまいます。

 

 実際の審査員に評価されると、何らか賞が得られたりすると思うので、そこに準拠したりする分かりやすいメリットがあると思いますが、審査員っぽいことを言うだけ人の価値観に準拠すべきか?というとそうとも限らないんじゃないかなと思ったりします。あくまでそういう意見がひとつあったと思えばいい話です。

 そしてひとつの意見としてはそれはそれで有用でしょう。

 

 自分が進む方向性で迷走しないためには、そういう感じに他人にジャッジされることに対して過剰に反応しないことって大事だなと思っていて、僕自身が若い頃にそうだったこともあって、今の若い人がそういうのにひっかかって迷走しないといいなと思ったりしています。