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「サンダーボルト」の感想と完結編が楽しみな話

 最近漫画を描いてコミティアに出たりもするようになったんですけど、そもそも僕がコミティアに毎回行くようになったのは、欲しい漫画がそこにあるという感じになったからです。なので、今回はその欲しい漫画について書きます。

 この人が新刊を描いたら絶対ゲットしたいと思っている人が色々いるのですが、その中のひとりがタオルまるめちゃおさんです。僕はタオルまるめちゃおさんの「サンダーボルト」というシリーズがすごく好きなので、その話をします。

 

 

 サンダーボルトは、自作の衣装を着て、自作の電撃の武器を手に仕込み、ヒーローになろうとする女の子のお話です。主人公のみっこちゃんは、子供の頃にダンボールで作った鎧を身にまとい、ごっこ遊びをしたイナズマ仮面を、高校生になった今リファインしてサンダーボルトとなり、現代の街にはびこる悪い奴らと戦います。

 

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 でも、このお話は、戦うべき悪とは何か?というお話なんじゃないかと思うんですよ。そして、そんな自分の正義とは何か?というお話なんだと思うんです。

 

 みっこちゃんの原点は小さい頃のヒーローごっこ遊びの最中に、友達が不良に襲われたことです。みっこちゃんは怖くて怖くて、戦えずに怯えて隠れてしまいます。それは決して悪いことではないと思うんです。小さな女の子が、年上の男たちとまともに喧嘩して勝てるはずがないんですから。

 でも、そこが原点なんです。大切な友達が暴力に晒されているときに、仮に負けることが分かっていたとしても、それを助けに行くことができずして、何が憧れた正義のヒーローだって話ですよ。その気持ちが、心の中に楔として残ってしまったみっこちゃんは密かに体を鍛え、武器を作り、衣装を作り、再び悪い奴の餌食になりそうになっている友達を救いに向かいます。

 かつて、立ち向かえなかった自分の乗り越え、今度は立ち向かう話です。それは簡単な道ではありません。殴られれば痛いし、殴るのだって痛いです。そんな思いをしてまで、なぜ戦うのか?っていうお話なんじゃないかと思います。

 

 世の中には暴力で解決できることはさほど多くありません。いや、厳密に言えば暴力で何かを解決しようと思えば色んなことができますが、暴力は基本的に振るった瞬間に悪と認定されてしまうものです。例えば、お金がなくて困っているから、暴力で他の人から奪ったとしたらどうでしょう?悪ですよね?つまり、そのような悪の汚名を着ることなく、暴力で物事を解決することはとても難しいということです。正義と認定される暴力には、逆説的に、ちょうどいい悪の存在が不可欠なのです。

 暴力が正しさを帯びることができるのは、別の暴力と相対するときだけでということです。悪いやつら、つまり自分たちの欲望を暴力的に満たそうとするやつらから、弱き者を守る、そんなシチュエーションでしか暴力行為を肯定することは難しいものです。正義であるためには、目の前にちょうどいい悪が、ちょうどよく弱者を蹂躙しようとしていることが都合がよいわけです。しかしながら、そんなシチュエーションがどれほどあるでしょうか?もしそれがなければ正義のヒーローになれないのだとしたら、果たして正義のヒーローとは何でしょうか?

 

 みっこちゃんのヒーロー活動は、そんな意味で多難です。彼女は戦う力を鍛えますが、世の中には戦う力では解決できないこともたくさんあるからです。特に最新の3話は、そんな話だと思っていて、目の前に確かな問題があることは分かっているのに、それを上手く解決するための方法が見つからないみっこちゃんの葛藤が描かれています。

 どうすればいいか分からない中で、行動し、空回り、それでも行動するみっこちゃんの姿は、最終的に優しく問題に寄り添い、完全な解決はできなくても緩和に導きます。ただし、それはサンダーボルトとしての活動ではありません。覆面をかぶらない、みっこちゃん本人としての活動です。

 ならば彼女にとってサンダーボルトとは何なのでしょう?彼女は何のためにサンダーボルトを続けようとするのでしょう?だからこそ、次の最終と予告されている4話において、彼女がいかなる結論に辿り着くのかをとても楽しみにしています。

 

 意地悪なのは、この「暴力を振るうことに対する葛藤」とは裏腹に、アクション描写はとても軽快かつ軽妙なんですよ。継ぎ目なくうねるように展開するバトルの様子が読んでいて本当に気持ちいいんですよね。

 そこにはある種の快楽もあるはずです。人体が動き、強い力を振るい、敵を倒す快楽です。でも、それが必ずしも正しくないという相反する状態の重みが、意地悪な感じで胸をざわつかせます。

 

 タオルまるめちゃおさんの漫画は、人物描写もまたすごくいいんですけど、3話ではメガネのテコンドー使いである黒沢さんがとてもよかったです。彼女の何を考えているのか分からない感じが、相対するみっこちゃんの素直さと対照的で、黒沢さんが何を思い、どうしてほしいのかが分からず、でも、言葉や行動の端々に、彼女が何かを投げかけていることだけは見て取ることができます。

 そのとっかかりに、よく分からないままでも手をかけようとするみっこちゃんと、その繰り返しによって変化が見える黒沢さんの態度がすごく良いわけなんですよ。ひとつ間違えれば、誰かを悪者として断罪できもしそうな人間関係において、人と人との心のぶつかり合いが、少しの変化をもたらし、そんな少しの変化が重なっていくことで、登場時に想像したものとはまるで異なる結末に心が転びます。その感じが、本当にすごく良かったんです。

 

 ということで黒沢さんの絵を描きました。

 

 本ですが、コミティアの会場に行けばゲットできるし、以下でもゲットできそうですが…今は購入不可になってるっぽいですね(2017/9/11現在)。

(2017/10/1追記)

 今は買えるっぽいですよ!!!

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