漫画皇国

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著者としての自画像を描くのは気を遣う関連

 「サルでも描けるまんが教室」にもありましたが、本の著者として自画像を描くときに、どのように描くべきかというところは難しいなと思います。そこには、自分をどのように見せたいか?という部分が関わってくるので、色んなことを気にしてしまうからです。

 

 僕は小太りの中年男性なので、似せて描くと小太りの中年男性の絵が出来上がり、まあそれはそれでいいのですが、漫画の絵は必ずしも似せる必要はないので、カッコよく描いたり、可愛く描いたり、逆にブサイクに描いたりすることもできます。

 

 ブサイクに描くのはメリットがないようにも見えますが、実物を見たときに、自画像ほどはブサイクではないんですね、と思って貰えるかもしれないという効果があります。つまり、カッコよくや可愛く描いたときには、実物はブサイクなくせに、カッコよくや可愛く描きやがってよ、と叩かれる可能性があるということです。

 そういう反応を意識するなら、受けるダメージを最小化するために自分を極端にブサイクな顔を描いておくという手段があります。

 

 以前、ある女性漫画家さんが「女の漫画家は顔出しなんてすべきではない。美人なら調子乗っていると叩かれるし、ブスならブスブスと言って叩かれる」と言っていました。それはそうだなと思うところがあって、容姿に対するコメントは、容姿を出した時点で誰かにされてしまい、何にせよ嫌な思いをする可能性がゼロではないので、出さない方が得策という考え方があると思います。

 実際、かつて容姿を叩かれたせいか、以後、顔出しをNGにしている作家さんも散見されます。人の容姿については、誰でもコメントが出来てしまうし、コメントをしたがってしまう傾向があると思うので、色々センシティブな話だと思います。

 

 これは容姿を叩かれるというだけの話ではなくて、褒める対象にもなるというのも気になったりします。例えば、ラジオなどに女性の漫画家さんが登場するときに、顔出しをしていないからこそ言葉だけで「こんなに美人な人が描いているんですね」というようなコメントがされているのを複数回聞きました。それは結局はご本人がどう思うかという部分なので、その良し悪しはケースバイケースだと思いますが、ポジティブなコメントならば、本業の内容とは関係ないところで容姿にコメントすることが無条件に許されるということは別にないと思います。

 

 僕がそう思う根拠は、以前友達が、たとえポジティブなコメントであったとしても関係ないところで容姿について言及されるのは嫌だと話していたからです。言う側に悪意はない場合が多いとは思いますが、仕事の内容という土俵に、容姿などの関係ない要素を持ち込まれるということについて、それは関係ないだろと思ってしまう気持ちは分かると思います。

 また、僕が実際に話を聞いたことがあるのは女性だけですが、男性にだって当然同じことは起こり得るでしょう。

 

 そういうこともあり、漫画家の自画像は、自分の顔とはあまり関係のない動物や無機物などに置き換えられることもしばしばです。それはあくまで「作者」ということを意味する記号であって、実物の容姿とは直接的な繋がりを外すことによる自衛手段の要素があると思います。他には、似せて描くよりも漫画の絵にした方が表現力が上がったり描ける速度が上がったりするので、様々なメリットがあると思います。

 なので、そういうことをする人も多いんだなと思いました。

 

 さて、僕の自画像は結局、自分の顔をベースに可愛らしさと不気味さを混ぜたようなものを描きました。なぜならば、自衛の目的でわざわざブサイクにしたとして、それを読者が見ていい気分には特にならないだろうなと思ったからです。ならばかわいらしい方がいいなと思ったのでそっちに寄せました。

 

 可愛い絵の印象から実物の僕を見て、実態は小汚い小太りのメガネのおっさんじゃんと思われたとして、実際そうなので、そうなんですよね…で終わるという部分もあって、いや、今こうやって自分の容姿をあらかじめ悪く書いているのがまた自衛の要素があるように思えますね。こういうことをしなくてもいいと思えた方がいいと思うのですが…。

 

 人が何かを見て何かを思うことは禁止できませんし、それがネットを通じてすぐに伝わってしまったりするのが今の世の中だと思います。そんな世の中で、自分を対外的にどう見せるかというのは一筋縄ではいかないのかなと思っています。誰に何を言われても気にしなければ、それで解決するかもしれませんが、それが思っただけでできりゃ苦労しない話です。

 僕も自分の対外的な顔をどうするのかは今描いているやつで決まりではなく、今後も色々試行錯誤してみようかなと思ったりしています。