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無自覚なパワーハラスメント関連

 「パワハラは悪い」ということは、賃労働に従事する上で、まともな遵法意識があれば合意できることだと思います。しかし、世の中にはパワハラ は存在し続けています。でも、そのパワハラ をする人が法律なんて守る必要がないと思っているとも限りません。

 

 最近色々見たものがあるので、それで思ったことを書いておきます。

 

 パワハラ は悪いと思いながら人がパワハラ をしてしまうことがあります。その矛盾する状態は、その人のパワハラ 行為に対して「これはパワハラ には該当しない」と認識するだけで辻褄が合います。

 そして、その境界は割と曖昧なものなのだと思います。ある人が、これはパワハラ に該当しないと思っても、別の人はそれはパワハラ だと判断することがあります。

 

 パワハラ の定義は以下の3つの全てを満たしたものです。

  1. 優越的な関係を背景として
  2. 業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより
  3. 労働者の就業環境が害される

 ここで曖昧となりやすいのは、「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」という部分をどのように解釈するかという部分だと思います。パワハラ をする側はそれを「必要で仕方のないこと」だと考えようとし、された側はそれは「必要なことではなく相当な範囲を超えている」と判断したりします。

 また、法律の範囲でパワハラ に該当しないレベルのものであっても、そのようなやりとりは人のモチベーションを大きく下げたり、離職のきっかけになったりもします。でも、人は何かの基準を自分に甘く他人に厳しく捉えようとしてしまいがちなので、そういうことは世の中の至る所で日々起きています。

 

 僕個人が考えているところでは、自分が仕事で部下に何らかの指示をするとき、相手が僕のこと指示を聞く根拠が「僕が上司で、相手が部下だから」しか見つからなければ、そこには何らかの境界を踏み越えてパワハラ が発生する可能性があるだろうなと思っています。

 つまり、上司と部下という関係性だけを元に言うことを聞かせる場合、そこには役割しか存在しないということだからです。そこでは、それ以外の人間的な部分は考慮する対象から除外されてしまいます。

 人間と人間としては問題のあるやり取りであったとしても、「自分が上司で、部下であるアナタは、職務上の内容なら言うことを聞かなければならない」ということになると、そこに何らかの澱のようなものが溜まってくるものだと思います。その領域では無自覚に踏み越えたことを言ってしまう可能性が高まってしまうと思います。

 

 最近見た事例では、パワハラ をした人は、自分では正しいことを言っているという自信があるようでした。しかし、それはやはり問題視されていて、処罰が発生してしまいました。

 なんでこんなことが起こってしまうのかなと思うのですが、思い当たるのは「拙さ」です。結局のところ、他人に自分の言うことを聞いてもらう方法が、「有意的な立場によって命令をするだけ」という方法しか身につけることができなかったという悲しさがそこにあるような気がしました。

 

 他人に言うことを聞いて貰う方法は他にもたくさんあります。例えば、持ちつ持たれつの関係性になることで、過去の恩義をベースに言うことを聞いてくれたりします。あるいは、相手に好かれることで、こちらを助けることが相手側にも喜ばしいこととして捉えられる状況になるなどもあるでしょう。他には、目的を共有することで、それぞれが納得づくて、同じ目標に向かうことを勧めることもできたりします。

 他人に指示を出す上で「相手の望まないことを、優越的な立場を背景に無理やり言うことを聞かせる」以外の方法は他にもたくさんあります。いや、そもそもは、そういった部分がなくとも動けるのが、仕事の良い部分でもあるとも思います。でも、働きやすい環境というものは、そういう雇用契約には含まれていない領域に対するケアが、少なからずあることでやっとできるものなのではないかとも思うんですよね。

 

 それがなくとも働きやすいと感じられるのだとしたら、イレギュラーを全く含まない、完璧な計画と、それをしていさえすれば品質を満たせる完璧な基準、そして、働く人がその条件を決して逸脱しないことが条件になってしまうと思います。その状況であれば、無理に言うことを聞いてもらう必要はなく、淡々とこなせばいいだけだからです。

 でも、現実にはそんなことがあり得るのはごく一部の領域だけだと思います。もちろん不確定要素はできるだけ排除するようにしますが、それでもイレギュラーなことは絶対に起きます。外的要因でスケジュール変更が発生したとき、やらなければならないことが不確定で、試行錯誤の中で見つける必要があるとき、部下があげてきた仕事が、求める品質に満たなかったとき、様々なイレギュラーが存在し、それを何とか目標に向けて軌道修正して納めなければなりません。

 

 そういった場所で大きなイレギュラーを前に、当初の目標に向かって大きく力を使って制御をしなければならないときに、他人への強い指示が発生します。そして、そこでパワハラも発生しうるものではないかと思います。しかし、指示している側は、目標に向かわなければならないのだから、それをしなければならないのだと思っているだけかもしれません。それでも境界を踏み越えるほどの強い力を発生させてしまえば、それはパワハラになってしまうことでしょう。

 

 思うのは、計画通りに淡々と何かをやっていられれば、パワハラが起きる機会はグッと減るだろうなということです。そして、イレギュラーに立ち向かうために強い指示をしなければならないときにも、優越的な立場の行使以外の方法も身につけていれば、その力を強くしすぎないで済むだろうなということです。

 僕が直近で見た事例では、大きく何かを動かさないといけないのに、そこで強い言葉で命令する以外の選択肢を持たない、拙さを抱えた人がしでかしてしまったことだと思いました。人が悪いというわけでもないんだよなあと思いながらも、やったことはやったことなので、相応の処罰を受けてもらうとして、そういったことがそもそも起こらなくなるような環境や状況を整備することもできた方がいいだろうなと思いました。