漫画皇国

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漫画の作画作業の工程管理方法関連

 お金を貰って漫画を描くという仕事を、読み切りで3話分(1話+前後編)やったので、その進め方で色々試しているメモを書いておきます。

 

 先日、編集さんと話していて、僕が以前、作画作業の進捗を聞かれたときに「工程管理表だと進捗率70%ぐらいなので、〇〇日までには終わると思います」みたいな返答をしたのが面白かったらしく、今までそういう返事をした人を見たことがなかったらしいので、そういう管理ってあんまりされていないか、されていたとしてもあまり共有されないことなのかなと思いました。

 

 作画作業は、ネームが出来ていて、ページ数もそこに描くものも決まっているので、全体の作業見積もりもしやすく、工程管理と相性が良い分野だと思います。ただ、管理方法は単純な方がいいなと思いました。一人でやっていることなので、管理するために必要な工数を大きくしても全体の効率が落ちるからです。

 そこで以下2点だけをやることにしました。

 

  1. 全体の工程の中での今の進捗率の把握
  2. 納期に対して現在の進捗率が適切かの評価

 

 ここでまず重要なことは「全体の工程をどのような単位で管理するか」ということです。最初にやったときはページ単位での進捗管理を行いました。しかし、これはあまりよくありませんでした。なぜなら、1ページの全コマを完全に終わらせないと、進捗率が上がらないからです。

 これは気分的な問題ですが、何かの作業をやったら数字が上がっていくというのは分かりやすいモチベーションになります。作業をしたのに数字が変わらないと、その作業をしたという意味を実感しにくく、やっても何も変わらないという認識になるとやる気が減っていくので、よくないなと思いました。

 なので、すぐに結果が出る方がいいなのと思いましたが、一方でやたら細かく管理すると管理することそのものが面倒になるので、増やしすぎてもいけません。なので、作業を以下の4単位にざっくりと細分化しました。

 

  1. コマ割り
  2. 人物
  3. 背景
  4. 仕上げ(トーン処理など)

 

 この分類の中でそれぞれの範囲での進捗率を見ることで、作業を進めるごとに進捗が変化する感を見て行くことにしています(ちなみに僕はネームをそのまま下描きとして使っているので下描きをするという工程はないです)。この辺何で管理するかなと思いましたが、今回は単純にエクセル表でやることにしました。予定ページの数だけ行を作り、作業内容ごとに列を作るというシンプルなものです。

 

 「コマ割り」の工程ははデジタルで描いていると、1ページあたり1分もかからず終わる工程なのですが実はとても重要なものです。なぜなら1ページごとのコマ数をカウントする工程と同時に行うことができるからです。コマを割ったあと、エクセル表上で、完了フラグを立て、割ったコマ数を入力します。このコマ数をその後の工程のセルにコピーすることで管理する単位の入力が完了します。

 そうすると「人物」と「背景」と「仕上げ」のセルにも、コマ割り時に残りコマ数が入力されるので、そこから1コマごとの工程が完了すると数を減らし、0になればセルの色を変えるようにしました。そうするとパッと見た面積で、どれぐらいが終わったかをなんとなく見えるようになります。これは管理上はあまり意味はないのですがなんとなく進んでいるような感じが見えるので、気分の問題です。

 

 さて、これによって各工程ごとの残り作業数が数字で管理できるようになりました。あとは、ここで増減する数字を使ってどのように納期までの進捗管理をするかということです。

 

 結局、あんまり多くの数字を使って細かく進捗を管理しても意味がないと思ったので、単純に残りのコマ数で管理するのがいいということになりました。つまり、全ページのコマ数を足して、残りの日数で割った数を一日に最低限進捗させるコマ数として設定するということです。

 あとは毎日、その数だけコマを淡々と描いていければ締め切りまでに間に合います。

 

 実際にやってみて良かったのは、コマ単位で管理することによって作業量の調整がやりやすかったことです。僕の本業の仕事の状況は日々違うので、仕事が終わったあと、漫画に十分時間を割ける日もあれば割けない日もあります。なので、その日、すぐに描き終わるコマをやるか、時間がかかるコマをやるかによって、ノルマのコマ数としては平均的にしながらも、一日単位の作業量を日の状況に合わせてコントロールすることができました。

 今日は時間がとりやすいから、背景を描き込むコマをやろうとか、今日は時間がないから、人の顔だけ描けばいいコマをやろうとか、そういうことをしたということです。

 

 このやり方をしていくと、基本的には大丈夫なのですが、問題点としては進め方に、僕個人の気持ちが無意識に現れることによって、後の工程にあんまり描きたくないコマが残ってきます。描きたくないコマとは、例えばモブキャラが多いコマなどです。モブキャラをあまり凝ってもお話の本筋には大きな影響がないので、重要でない割には手間がかかるコマになります。作業量の割に達成感がないので、あんまりやりたくなりません。

 じゃあどうするかというと「それでもやる」というだけなのですが。ただし、この段階になってくると、あともう少しで完成するという状態になってきているので、もうちょっとだから頑張ろうと思えることもあって、なんとかモチベーションが途切れないように終えることはできました。

 

 とりあえず3本やってみて、工程管理はしてよかったなと思います。また、僕がやっている漫画作業の進捗管理の難度は、別に難しくないものだなと思いました。本業でやっている開発の管理に比べると、他人に頼んでその内容が期待していたものと違っていたり、想定していた期日までに仕事が上がって来なかったりすることがないからです(ここには僕がひとりで描いているという事情もあります)。

 ネームを描くのは時間が読めなくてしんどいんですが、作画に入ると淡々とできるので、割と気楽に出来て良かったなと思いました。

 

 工程管理をすることのメリットは、全体の作業量を見ながら進めることができるので、もしイレギュラーなことがあって作業が遅れても、遅れているなりに残り時間の中で作業量を調整しやすいというところがあります。もし描くのが面倒なコマが残っている場合に時間が足りないなら、残り時間を考えて、そのコマをどのように描くかを変えて調整してもいいです。

 時間が足りないなら、それが早め早めに分かるので手を打つことができます。そうすることで、締め切り間際になっても、無理せずできるぐらいの仕事量になっているので特に困ることなく作業が終わりました。

 このやり方によって、7月に発売されたコミックビームに載った読切32ページと、8月に発売されるヤングキングに載る読切前編32ページ+後編24ページは、スケジュール通りに終わらせることができました。良かったですね。

 

 そう!今月はヤングキングに読み切りが載るんですよ。ちょうど今日前編の載った雑誌が出ました。

 

 ということなので、もし良かったら読んでみてくださいね。