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「ちーちゃんはちょっと足りない」と言い訳が人間を狂わせる関連

 「ちーちゃんはちょっと足りない」は、阿部共実の漫画です。この漫画は、年齢に対して行動が幼い中学生のちーちゃんとその友達のナツの物語です。2人は同じ団地に住んでいて、あまり裕福な家庭ではありません。彼女たちの何気ない日常が描かれる中で、あるとき、2人はお金を盗んでしまいます。それが物語の転換点となります。

 

 2人は盗んだお金で、欲しかったものを手に入れます。でも、それはしてはいけないことでした。彼女たちはなぜそれをしてしまったのか。それは「足りないから」です。他人と自分を比較して、自分が他の人よりも足りていないという不公平な恵まれなさを感じてしまったからです。

 だからこそ、「自分はこれぐらいのことをしても許される」という言い訳が成り立ってしまいました。

 

 多くの場合、人の行動はその本人の中では辻褄が合っていると思います。いかに他人から見て不可解な行動であったとしても、その人の見えている世界では、それをすることが一番ましに見えていたからこそしてしまうわけです。

 「お金を盗む」ということが「悪いこと」であることを、ナツは分かっていました。その時点で、「悪いことだからしてはいけない」という理屈は無力です。なぜなら「悪いことだけれど、自分にはそれをしていいはずだ」という理屈がナツの中にはあるからです。

 

 お金持ちの家に生まれてさえいれば、そもそも盗む必要はありませんでした。自分のお小遣いで欲しいものが買えたからです。周囲のみんなが当たり前に持っているようなものを自分が持っていないとき、それを当たり前だと受け入れることは果たして当たり前でしょうか?

 いや、しかたないことではあります。それでも、生まれた時点で何かが決まっているということについての不公平感を感じることはあるはずで、それが全く認められないのは少し暴力的ではないでしょうか?

 

 罪を犯した人間と、そうはならなかった人間の差に、人間性ではなく生まれた環境の不公平もあるのだとしたら、それを人間性の話だけに落とし込むことには辛さを感じてしまいます。

 だからといって、窃盗が肯定されるわけでは決してありません。でも、その「自分が恵まれていない」という気持ちが「自分は窃盗をしたって許されるはずだ」という気持ちに繋がってしまったことはとても悲しい話だなと思いました。それが言い訳になりうる状況でさえなければ、彼女が窃盗をしてしまうことはなかったと思うからです。

 

 「貧しい」ということ以外にも、人は色んなことを言い訳として使うものだと思います。その言い訳が成立する状態では、普段のその人であれば、決してしないようなことをしてしまったりします。

 

 僕の場合だと、「忙しい」という状況がそれにあたります。何かをしなければならないことが、自分の中で優先度が一番高いところに入ってしまうと、それ以外のことがどんどんおろそかになっていまいます。なので、忙しいと部屋がどんどん散らかっていったり、節制なくご飯を食べてしまったり、髪を切りに行く気持ちになれずどんどん伸びてきたりします。仕事関連以外のメールやメッセージに返事ができなくなったりもします。

 忙しくない時期には割とちゃんとやっているので、自分は社会や健康をちゃんとやれない人ということではなく、それをやるためには、忙しくなり過ぎないことが必要な人なんだろうなと思います。「忙しいから仕方がない」という考え方が、自分の中の奥の方に存在していて取り除くことができないからです。何かやらないといけないことがあることは分かっていても、それをしなくていい理由を忙しさに与えられてしまいます。

 

 僕の考えでは、こういうのは仕方ないんですよ。強靭な意志の力でなんとかできる人もいるのかもしれませんが、僕はあんまりできません。だからこそ、自分を上手くコントロールするためには、忙しすぎない状況を作るということが重要で、忙しい中でも頑張ってやるのではなく、忙しくならない状態で気楽にやれるようにする方をした方がいいなと思っています。

 

 今すげえ忙しくて、あらゆることがおろそかになっているので、そういう気持ちの指差し確認をしました。