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「鬼滅の刃」と絆の呪い関連

 昨日、ローソンに入ったら映画のキャンペーンもあるのか、これでもかと鬼滅の刃コラボの商品が並んでいて、家に帰ってきてからテレビをつけていたら、そこでも映画のキャンペーンで鬼滅の刃の話をしていたので、僕もなんかいっちょ書くかなと思ったので書きます。

 

(免責:雑誌連載で読んだきりでその後読み返してないため、細かいとこ間違ってるかも)

 

 鬼滅の刃は、人を鬼に変えることができる鬼舞辻無惨という鬼が、お話の中核となって生み出された物語です。この物語は、無惨によって、主人公、炭治郎の家族が殺され、妹の禰豆子を鬼に変えられてしまったところから始まります。炭治郎は鬼を殺すために組織された鬼殺隊に入り、無惨を倒すための戦いに身を投じます。

 

 この物語に存在する大きな価値観としては、「変わるもの」と「変わらないもの」の話があると思います。ざっくり言うと、変わるものは人間であり、変わらないものは鬼です。

 無惨が求めているのは、変わらないものです。永劫不変な完璧なる到達点を目指しています。そのために必要なのは、自分の弱点である太陽の光の克服です。だからこそ、太陽の光を克服できる変異を遂げる個体を生み出すために、鬼を増やしていました。

 そして、人間はそうはいきません。人は死にます。人は変わります。人から失われたものの多くは二度と戻ってはきません。

 

 だからこそ人間には絆があります。ここで絆というのは、人と人の繋がりのことです。誰かが誰かに想いを託すことも絆です。人の肉体は滅びても、想いは別の人間に引き継がれ、一人の人間では成し遂げられなかったことを成し遂げます。

 

 この物語は絆の物語だと思いました。

 

 そして、絆の物語であることのもう一つの意味は、人から鬼に対する怨みです。誰かに何かを奪われてしまったということによる、奪った相手への執着という意味での負の絆です。

 この物語は、そんな負の絆を手繰りながら、人から人への正の絆をより合わせて、不変なるものに挑む物語であったと思います。

 

 この絆で雁字搦めにされてしまった物語の中で、そこから最も自由であったのが無惨です。彼には特定の誰かに対する強い想いがありません。彼にとって自分が鬼に変えた者たちはただの道具であり、自分を殺そうともくろむ鬼殺隊も、その中でかつて自分を脅かす恐怖を与えた剣士、縁壱に対しても、邪魔とは感じていても、個人に対する強い執着の気持ちはないように思いました。

 彼が見ているのは、あくまで自分の境遇への不満、どれだけの強さを持ちえたとしても克服できない、太陽の光へのコンプレックスです。

 

 だからこそ、無惨は自分の存在に執着する鬼殺隊を理解しません。鬼殺隊が抱える自分に対する負の絆を、自分を大災になぞらえて一方的に断ち切ろうとします。自然災害で自然そのものに怒ることを無意味と捉えるように、自分が行ったことに対しても、何代にも渡って怨みを抱え続けることは無意味だと断じます。

 

 無惨が生み出す鬼は、そんな無惨の変わらないという理想を体現する存在でもあったと思います。彼らの中には、人間であった頃に強い怒りと怨みの気持ちを抱えていた者たちが少なくありません。自らの境遇に対する絶望から、鬼になることを受け入れた者たちがいるのです。しかしながら、彼らは鬼になり、長い時間が過ぎる中で、ただ感情だけを残して、自分が何に対して怒っていたのかも、何を怨んでいたのかも忘れていきます。

 彼らは純粋に、その感情だけを保存する器として、完成していきます。彼らの抱える負の感情は解決されることがありません。なぜならば、自分たちがなぜその気持ちを抱えたのかも忘れてしまっているからです。具体性を失った、純粋な感情を擬人化したような存在と化してしまいます。だからこそ、説得は無意味です。説得は、具体性に対して行われるものだからです。例えば、なぜか分からないが怒っているという人に対して、人にはかけられる言葉がありません。

 

 鬼の中には、過去の記憶を取り戻して死んでいく者たちがいます。彼らは自分たちが何故怒っていたのか、何を怨んでいたのかを取り戻し、自分の中で決着をつけていきます。

 変わらない存在であった鬼が、変わってしまうことによって自分たちの人生に決着をつけていきます。

 

 この物語は、変わらないものを追い求めていた無惨が、変わらないものを追い求めるあまりに、ついに変わっていくことで決着を迎えます。無惨は、最期の最期に、永劫不変なるものとは完璧なる自分自身ではなく、人間たちが紡いできた人の絆の中にあることを理解します。

 それによって、それまで誰に対しても強い絆を求めなかった無惨が、自分の力を継ぐことができる存在に対して、初めての絆を見出そうとしました。千年の探求の果てに、遂に、変わらないものは、変わりゆくものの中にこそ存在しうるという矛盾するような結論に至るのです。

 

 しかし、その絆は拒絶されてしまいます。多くの人々に対して長きにわたって自分に対する負の絆をばらまき続けてきた男が、自分から初めて唯一求めた絆を拒絶されることで、この戦いは終結に至るのです。

 それは、その絆が、人を絡めとる呪いでもあるからでしょう。

 

 鬼滅の刃の物語は、絆によって呪われた物語ではないかと思います。誰もが良くも悪くもその糸に雁字搦めにされていました。その全てを断ち切ることができた世界で物語は終わります。

 

 ここで、「断ち切る」とタイトルの「刃」をかけて締めたら、なんかカッコいいのでは??と思って、なんかいい感じにして文章を締めくくれるのでは??と思ったのですが、なんか上手くいかなかったので終わります。

 いや、鬼という存在を、不変なる感情、負の絆としてなぞらえた場合、それらを全て断ち切った物語として、鬼滅の刃というタイトルを理解すればいい感じですか?どうですか??

 なんか分かりませんので、もういいです。