漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

同人誌を作ると自分の形が分かって便利関連

 しばらく前にインターネットを見てたら、「コミケに出ることは自分が特別な存在でないことを知ること」みたいな話が流れてきていて、これはつまり、世の中にはすごい人が山ほどいて、自分はすごくないってことを知らされるって話だろうなと思いました。

 

 でも、僕は自分のサークルではコミティア文学フリマしか出たことないですけど、出るたびに自分は特別な存在だな!!!という気持ちになっているので、同人誌即売会に出ることは自己肯定のためにめっちゃいいなという話をしようと思います。

 

 同人誌即売会の何がいいかって、参加するためにあたって本が発生することです。発生するというか、自然に発生するわけじゃなくて、自分が頑張って作っているんですけど、本ができあがったのを見たときがとにかくめちゃくちゃ感動的なんですよ。

 同人誌を作るためには、生活の中からそこそこの時間をつぎ込んでるわけじゃないですか。それまで液晶の画面でしか見ていなかったものが、その労力の果てに紙に印刷された本という物理的な存在になって目の前にあるということ、これがマジですごいんですよね。

 初めて自分で同人誌を作って、初めて文学フリマに出たときに、自分が作ったものが本になったことにめちゃくちゃ感激してしまって、すぐに2冊目を作りました。そこから、ひょっとして自分は漫画も描けるんじゃないかな?という気持ちになったので、三十代半ばの中年が急に漫画の同人誌を作り始めたりして、今もやっているわけです。

 

 同人誌の何がいいかというと、それはその中に自分そのものがみっしり詰まっているものだということです。

 

 同人誌は誰に頼まれるでもなく、全て自分で考えて自分で描いて自分でOKを出しているので、作った本は隅から隅まで自分の価値観で満たされています。例えば、世の中にどれだけ素晴らしい漫画があったとしても、それはたまたま自分に合ったというだけで、自分のために描かれたわけではないですよね?

 でも、同人誌は自分のために描くことができます。そんな特別な本を物理的に存在させることができるの、めちゃくちゃ助かる行為だなーと思ってしまいます。

 

 他人に「あなたはどんな人ですか?」と聞かれたときに、どう答えるでしょうか?○○という音楽が好きとか、××という漫画が好きとか、どういう会社に勤めているとか、配偶者が誰であるとか、色んな言い方をすることができますけど、そういうのって、自分の話をする目的なのに、結果的に自分じゃないものの話をする行為じゃないですか。それって不思議ですよね。

 「もち食感ロール」みたいじゃないですか。もち食感ロール、美味しいのに、名前はもちの話です。もちというすごいものがあって、それに似ているということを名前にしてしまっている以上、こんなに美味しいのに、もちの価値に寄りかかっている雰囲気が出てしまいます。

 同人誌を作ることとは、もち食感ロールから「もち」という言葉を取り除く行為なんじゃないかなと思うということです。そうすることでこれまでも、実は本当は、もち食感ロールにちゃんとあったのに見えにくくなっていた価値が明確に見えるようになると思っていて、だから同人誌を作ると便利じゃないかなと思うんですよね。

 自分がどういう形をしているかを、自分以外の要素で輪郭を縁取ることで表現することではなく、そのものを直接的に実体化させる行為が同人誌なんじゃないかなと思うということです(ただし、二次創作だともうちょっと違う文脈もあると思いますが)。

 

 自分が他の誰かと比べて似ているとか秀でているかどうかなどではなく、自分が他人と比較せずともどのような形をしているかを具体化する行為が同人誌を作る行為なんじゃないかなと僕は思っています。なので、僕は自分が作った本が増えるたびに、自分の形をはっきりさせるものがまた増えたと感じてとても嬉しくなります。

 これって自分が誰にも似ておらず特別であることを確認する行為じゃないですか??他の誰かとの比較を利用せずとも、自分がどのようなユニークな形をした人間であるのかを示し、本という形でくっきりさせることができる行為だからです。

 

 創作活動には、そういう便利な面があると思うんですよね。

 

 こういう創作活動は、別に同人誌即売会に出なくても出来ると言えばそうです。でも、人間は〆切が決まっていないとなかなか動けないとかありますし、この日までに入稿しなければならないという気持ちが、いつまで経っても完成しないかもしれない漫画を無理矢理にでも完成に持って行ける力があります。

 そうやって、即売会の朝に、印刷所に会場搬入をしてもらったものを確認すると、前述のようにめちゃくちゃ満たされた気持ちになりますし、自分そのもののようなものが物質になったぞ!!とはしゃいでしまうので、同人誌即売会に参加するのは、その時点で勝利なんですよ。そのポイントは本を完成させることです。

 

 そこから先のことはオマケみたいなものです。僕は本ができた時点で勝利なので、仮に1冊も売れなくても堂々とやりきったぞ!という気持ちでいられると思います。とはいえ、在庫を家に大量に抱えるのも困るので、全く売れなければ刷る部数は減るかもしれませんが。

 

 逆を言うと、他人にウケたいという気持ちだけを抱えて同人誌を作り、売りに行くと、心に傷を抱えてしまうかもしれません。それは結局のところ他人を使って自分をかたどる行為になってしまうからです。他人を使って自分の形を把握しようとしているのに、他人がちっとも来てくれなければ、どんどん自分の形が不定形になってしまいます。自分の形が分からなければ、それは不安なのではないでしょうか?

 別にそれで飯を食うつもりがあるわけでもないなら、好きな物を作ればいいと思うんですよね。そうすれば、その行為そのものに満足感が得られると思うからです。

 

 さて、2月9日(日)に開催されるコミティア131に参加します。今頑張って漫画を描いているので、細かいことはまた告知します。