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ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドを遊びながら地元を思い出す話

 ニンテンドースイッチゼルダの伝説ブレスオブザワイルドが発売日に手に入ったので、ここ一ヶ月弱遊んでいます。まだ始めたばかりというぐらいの気持ちでいたのにプレイ時間が50時間ぐらいになっていて、数字で確認したときびっくりしてしまいました。

 

 メインストーリーの進捗としては4体の神獣に巣食う中ボスのうち、今のところ3体までは倒していて、たぶん最後の1体を倒せばラスボスのガノンに挑戦するという感じなのかなあと思っていますが、まだまだ探索していないところが沢山あるので、色々後回しにしてゲームの中の世界を駆けずりまわっています。

 このゲームの世界は、走って回るには大変で広いものの、頑張れば走って回れないこともないぐらいの大きさで、それぐらいの広さの中に、灼熱の火山や、凍える雪山、からっからの砂漠に、植物生い茂るジャングル、そして、広い草原や遠く広がる海原があり、様々な種族が住む街や、道沿いに点在する集落、モンスターたちの拠点、あるいはかつて何かが存在したであろう遺跡があり、その間を行き来する人々ともすれ違います。そこに住む動物たちもいます。

 昼夜が変わり、温度が変わり、天候が変わり、風向きが変わり、そして、それらのそれぞれが互いに干渉することで、変化が生まれます。同じ場所でも、晴れた昼間と、雷雨の夜では全く異なる顔を見せます。全てを見ることができないぐらいの世界がそこに広がっています。

 

 土地と天候とキャラクターの関わりあいによって、目の前に広がる状況が変化します。それらに干渉する一番強い力は、僕が操作するリンク自身ではないでしょうか。自分が関わることで、様々なものが変化します。意図した通りに、あるいは意図しない形で変化する様子を見て、楽しい気持ちになります。

 

 楽しいので延々遊んでしまっているのですが、この楽しい気持ちとしては、地元に住んでいた頃の特に予定のない休みの日を思い出します。

 僕は自転車に乗って遠くへ行くんです。あの山を越えたらそこには何があるのか?あの橋を渡ったら、あのトンネルを抜けたらどんな光景が広がっているのか?子供の頃から自転車で県内をの色んな場所を走り回り続けたことで、行ったことがある場所が少しずつ増えていきました。当時は今ならスマホで見れるような地図も持ち歩いていなかったので、その先に何があるのかを僕はあまり知らないのです。こんなところにこんなお店があったのかとか、神社があったのかとか、山の頂上から眺める風景とか、そういうものを意味もなく記憶の中に集めていました。

 僕が住んでいた場所は、遠くにいこうとすると最終的には山か海かにぶつかる土地でした。その山や海を越えられないことはないのですが、体力的な問題で結局越えて他県まで行けたことは一度もありません。ただ、その向こうにはここ以上に限りなく広い世界が広がっているということだけは思っていました。自転車を何時間もこいで、幼少期に過ごしていて、今ではあまり縁もない土地に辿り着くこともありました。その頃とは違う目線でその土地を歩き、記憶を掘り起こしたりして、また帰ってきます。ひとりで過ごす時間だけは十分あったので、そういうことをよくしていました。

 

 ゼルダの世界には祠があります。それはランドマークのようなもので、1種類の謎解きと、ご褒美があり、ワープできるスポットとして機能します。当時の僕にとってはそれが本屋でした。だいたいの遠出の場合、本屋をチェックポイントとして休憩したり、そこで折り返して帰ってきたりしていました。田舎なので本屋が広くてでかいんです。そこでしばらく立ち読みをしたり、近所の本屋では見かけない本を見つけて買って帰ったりしました。

 中学生以降では県内にブックオフが沢山出来初めて、古本屋は店舗ごとに品揃えがまちまちなので、それが楽しかったということもあります。知っている作家の見たこともない本を、何時間も自転車をこいで辿り着いた先で見つけて喜んだりしました。

 次からそっちの方面に遠出するときには、本屋が目印になります。あの本屋まで、あの本屋までと思いながら自転車をこぎました。頭の中にどこに本屋や古本屋があるかという地図ができてくると、そのはしごなんかもよくしました。確か高校生のとき、「沈黙の艦隊」を立ち読みし始めて、でも近所の古本屋には歯抜けのような品揃えで、別の古本屋に行って続きを読み、また別の古本屋に移動しては続きを読み、ということを繰り返したりしました。当時はお金をほとんど持っていなかったので、立ち読みばかりをしていました。今思えばよくないですね。

 最終的にある古本屋にある漫画を棚の端から端まで全部読んだので、何万冊という規模で読んだと思いますが(毎日放課後に本屋に行っていて、休日には一日10時間とか平気で立ち読みしていたんです)、地元にいた頃に買った漫画はせいぜい100冊程度です。今は電子版を入れると一万冊近くは所有していると思うので、それをもって許してくれという気持ちですが、当時よく行っていた本屋のかなりの数が今では潰れているので、償い切れないものというものについて考えます(話が逸れました)。

 

 このように、ゼルダの伝説ブレスオブザワイルドを遊んでいると高校生までの地元で生活していた頃の自分の生活を思い出します。あの頃、山や海の向こうにはまだ行ったことのない無限の世界が広がっていて、それを思いながらも、自力で駆けずり回るには十分広い地元の土地を散策していました。そして、進学に伴って、その生まれ育った土地を離れることになりました。

 ガノンを倒せば、このゲームの本筋は終わるのだと思います。そうすれば、あの行けない山の向こう海の向こうにあるだろう、別のゲームに手を出すことになるのでしょうか?それとも、まだ十分に探索しきれていないこのゼルダの世界をしばらく駆けずり回るのでしょうか。ゲームのメインストーリーをクリアしてしまうと、残りの要素があってもなんとなく止めてしまったことも経験上多々あるので、それがなんか怖くて、進めようと思えば進められる話をそのままにして、今は別のことをしています。

 

 ともあれ、これ、ヤバいと思うのは、ゲームの中の各土地に、既に思い出が蓄積し始めているんですよ。前にここに来たときには、こういうことがあって、こういう戦いをしたなとか、ここの入り口が分からなくてぐるぐる回ったなとか、寒さしのぎに焚き火をして、気温が上がる夜明けまで待ったり、岩壁を登る途中で雨が降り始めて、滑落しないように天気予報を見ながら止むのを待ったり、そういったこもごもを、再びそこを訪れたときに思いだし始めたりしているわけです。

 以前、「大学時代はフォークリフトのバイトをしたな」とか思い出したあと、一瞬あとに、それは実体験ではなくシェンムーの中の記憶だ!と気づいてしまったことがあって、ゲームの中でやったことが、完全に自分の思い出の一部になってしまっているということに気づいて、それはきっとよい体験であったと思っています。

 

 何年か後に、地元での生活を思い出すように、このゲームの内容を思い出す感じになったらいいなと思ったりしています。

 

 それはそうと、ブレスオブザワイルドはハンターハンターのキメラアント編のゲーム版のように思っているところもあって、自然保護のNGL自治区と、怪物の王に乗っ取られた東ゴルトー共和国を足したようなマップ構成に、その中心にいるであろうラスボスと、周辺を守っている手下たち、出来るだけ近づいてワープポイントを作って帰ってくるのはノヴの四次元マンションだなとか思いながら遊んでいます。遊びながらリンクは過去の記憶を思い出すので、もしかすると自分は人間の頃の記憶を徐々に思い出している、キメラアントなのでは?なんてことも思います。

 このように色んな見立てが可能で(他にそんなことを考えている人はいないかもしれませんが)、そういうどうでもいいことを考えながら遊んでいます。クリアまであと50時間ぐらいは遊びたいですね。