漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

本屋が減っている件について(実感編)

 今月の頭から働く場所が変わりました。これまでは都心で働いていたので、通勤の導線上に複数の大きな本屋さんがあり、欲しい本はそこにいけば何でも買えるという恵まれた状況でしたが、それが一変してしまいました。本屋がないのです。

 正確にはあるにはあるのですが、欲しい本が全部置いてある本屋が通勤の導線上にありません。あるのは駅中の本屋とコンビニの本のコーナーぐらいで、マイナーめの月刊漫画雑誌やマイナーめの出版社の新刊単行本が入荷しなかったりするのです。仮にあっても1冊ぐらいで、僕が買うとなくなってしまいます。

 

 僕がこれまで大きな本屋の近くで生活をしていて、まあ何でも買えるしと思っていたことはとても贅沢なことで、それを失って初めてちゃんと実感しました。欲しい本がすぐに買えません。うわー、めんどくせえ。

 これを機に、月刊誌の購読については電子書籍へ本格的に移行をするかという感じなのですが、単行本は紙でほしいことの方が多いので、それをどうするかといった感じです。一旦家に帰ったあと、家からちょっと離れた大き目の本屋までバイクで行くか、通販か、あるいは、仕事で都心に行くとき(週に一回以上はある)に買ってくるかというところです。

 

 本屋の数はどんどん減っていますね。調べてみたら、今の仕事場の近所にあった本屋は数年前に潰れてしまっていて、この駅の近辺にはもはや本屋がほぼない状況です。僕は毎日のように本屋に行くタイプの人間なので、うそー、まじかよという気持ちなのですが、世間がこちらのほうがもはや当たり前なのだとしたら、こいつはしんどいなという気持ちにもなります。

 思い返せば、僕が地元でよく行っていた本屋も、かなりなくなっているんですよね。駅前にあった本屋を、毎日3件以上はしごするのが日課だった僕からすると思い出の場所の消失ですよ。もう小山助学館の本店も漫画専門館も、ブックセンタービルも、アダムと島書房もありません。当時はお小遣いという概念の存在しない家庭にいたので、一年間お年玉の切り崩しだけで生きていて、お金がないのでひたすら雑誌の立ち読みをしていました(迷惑すぎる)。単行本をたまに買うぐらいでひたすら立ち読みをして過ごした本屋がなくなってしまったことに、何かしら思うところはあるわけですよ。そんな中、南海ブックスがまだ強く生き残っていることには、とても心強さを感じます(ローカル話題)。

 

 僕が本にそこそこお金を使っているとはいえ、年間百万円には決して届かないぐらいだと思います。使う側からすればそこそこの額ですけど、使われる側からすれば大した額ではないわけですよ。それをひとつの本屋につぎ込んだところで、バイトをひとり雇うための年間の人件費にもなりやしません。つまり、僕個人がいくら頑張ったところで本屋は営業を継続できないし、本屋がなくなっていくのを指をくわえて見ていることしかできません。

 

 こういう話をすると「時代の流れについていけない業態は潰れてもやむなし」みたいな話をする人がいるじゃないですか。いないかもしれません。いや、いるとしましょう。仮定してみてください。僕はその架空の人に対しての文句を言いますが、それは正しい物言いかもしれませんけど、現実問題として僕は家の近所に何でも買える本屋があると嬉しくて、そんな本屋がないとしんどいんですよね。本を手に入れるためにひと手間加える必要があるからです。その正しい物言いが僕を楽にしてくれるならいいですけど、全然そんな力はないわけじゃないですか。それはつまり、これは時代の流れなのだから、お前は不便でも受け入れろ、それが正しい考え方だって言われているだけじゃないですか。なんなんだよてめえはよう!!って思うじゃないですか。

 ただでさえ買えなくて不便なのに、それに追い打ちをかけるような「これは時流に乗れなかった者に対する罰だ!」みたいな言葉はなんなんですかね。ただいたずらに他人を傷つけたいだけじゃんじゃないですか?人間が腐っているんじゃないですか??

 

 架空の存在にめっちゃ腹を立ててしまいましたが、現実はどうにもならないので、その中でどうにかやっていくしかありません。

 

 買う気が割とある僕のような人間でも、めんどうくささと向き合って2勝3敗で負け越しているような現実が目の前にあるわけなのですが、買う気がない人間からすると、もはやどうにもならんのだろうなと想像するところがあります。おそらくここから数年かけて、月刊漫画雑誌は紙で出すのが割にあわなくなって、Webに移行していくんじゃないかと想像していますが、でも、紙には電子にはない利便性(机の上に放置しておくと他の誰かが読むなど)があったり、どうしても電子では届かないタイプの人たちもいるわけです。電子で事足りるというのは近年増えてきたものの、それでもまだまだ人口の3割行ってればいい方で、残りの7割を捨てるかどうかって感じなんじゃないかって思うんですけど、そのバランスが電子の方が多数派に切り替わるあたりで、何か変わるんじゃないかなとは思います。

 変わったあとにあるのは、従来の月刊漫画雑誌が電子化したものではなく、それらはなくなってしまい、新しくWeb漫画雑誌が同じ場所に座るというのが実際なのかもしれませんが。

 

 お金が回らなければ何も続けられません。だから本屋も出版社もお金を儲けなければなりません。そこに貢献しない人間に対して、漫画を読むのがタダだと思っているのか?みたいなことを思うのも、正しい認識だと思います。僕もそう思って、欲しい本はお金を軽率に出して買っていますけど、でも後ろめたいことに、子供の頃に無限に立ち読みしていた時期があるわけじゃないですか。

 じゃあ、昔はなんでそれでもよかったのかな?って話があるわけですよ。それはきっと僕以外の人がたくさん本を買っていたからなんでしょうね。その豊かさの隅っこで、金も払わずに一部を享受できたのが僕の幸運で、同時に罪深さです。

 

 あー、本屋なくなってほしくないなあとすごく思います。池袋のジュンク堂なんかに行って、異常な数のレジとその前の長蛇の列を見たりするとき、「ああ、こんなにも本を買いたい人がいる!!」って思うわけですよ。本、欲しいわけじゃないですか。それでも、そういう人がそこそこいたとしても、なくなるときはなくなるもんだなと思いますし、それが悲しくてやりきれません。

 

 そういう感じのことを、発売日に買いにこれなかった本を大きな本屋までやってきて十数冊買いこみながら思いました。