漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

蝶のように漫画を読み、蜂のように絵をパクる話

 僕は絵を描くのが好きなんですけど、ほんとすぐに他人の影響を受けた絵を描きます。つまり、良いと感じた絵を容赦なくパクりまくっています。

 

 そもそも僕は絵を見るのが好きなんですけど、世の中のほとんどの絵は僕個人に向けては描かれていないじゃないですか。でも、唯一僕に対して気軽に絵を描いてくれる存在がいます。それが自分です。なので、僕は自分が喜ぶ絵を描くんですよ。そんでもって自分を喜ばす絵というのは、きっと自分が好きなものだけが山ほど詰まった絵じゃないですか。そして、自分がどんな絵が好きかというのは、他人が描いた絵を見て気づくことが多いのです。なので、僕はそれらをパクることにしています。つまり、色んな好きな絵を描く人の好きな部分を勝手にパクリまくるわけです。それらを僕の下手くそな画力でつぎはぎにして誕生した、フランケンシュタインの怪物こそが僕の絵です。

 例えば目の描き方、鼻の描き方、口の描き方、全身の筋肉の描き方、他にもそれぞれ元ネタがあります。ただし、それぞれ元ネタが複数あるために、混ぜ合わされてぐちゃぐちゃになっています。僕はそれらを意識的にパクっているので、僕自身にはそれぞれの元ネタが具体的に何か分かります。ただし、分からない人にはオリジナルと誤解されるかもしれません。もしそういう人がいた場合、その人たちの目は節穴です。

 

 僕がこういうことになっているのは、基本的に漫画を見て、漫画の絵を描いているからで、実在の対象物を見て、漫画の絵に落とし込むというようなことをちっともしていないからかもしれません。漫画を読むのが好きの延長で絵を描いているんですよ。絵を描いてはいるんですけど、それは創作というよりは、実質漫画を読んでいることに近い。

 

 僕が描く絵が他の人から見て良い絵かどうかは分かりません。僕の好きなもの全部のっけ丼みたいなものなので、僕からしてみれば全部好きなんですけど、他の人がどうだかは知ったこっちゃないのです。そして、それでいいじゃないですか。だって、僕は絵を描いてご飯を食べているわけではないので、他の人を喜ばせる必要なんてまったくないですし、描いている僕自身が楽しければ、他に何の問題があるって話ですよ。

 

 さて、僕は好きな漫画のファンアートをよく描いているんですけど、それって何のために描いているかというと、その漫画の絵柄の好きな部分と自分の絵を混ぜる実験みたいな側面があります。自分の絵柄をベースにその漫画の絵を描くことによって、その漫画の絵の好きなエッセンスが自分の絵の中に取り込まれるわけじゃないですか。もちろんそれは不完全ですよ。なぜなら僕は絵が上手くないですし、漫画家さんはみんな絵が上手いからです。下手なのに上手いのを完全に再現できるわけがないじゃないですか。でも、その一要素みたいなものを少しでも自分の中に取り込むことができれば成功です。
 僕が好きな漫画は晴れて僕の絵の一部になるわけですよ。それは歪かもしれませんが、好きという気持ちの表明の一形態ではないでしょうか?

 

 好きなものにはすぐに影響を受けてしまうことこそが、僕の全力の好きの表現なんですけど、絵に限った話ではなく、面白いなあと思った人の語り口とか、好きな人の口調とか、めっちゃいい文章を書くひとの文体とかをすぐに真似してしまいます。小中学生の頃に、日曜日の夜に見たダウンタウンのごっつええ感じのコントを月曜日に学校で再現していた頃となんら変わりがありません。おっさんになった今でも、好きな芸人のネタのモノマネとかを友達との会話の端々に盛り込んでいっています。なぜならめちゃくちゃ好きだからです。好きなものの好きな部分を自分で再現するのって、僕はめちゃ満たされる感じがするんですよ。

 

 ただ、他人に真似されるのって、真似される側からするとストレスになるみたいなところもあると思うので、そういうところを気にしないでもないですが。

 

 色んな好きなものを容赦なくパクりまくって、自分のものであるかのように使うじゃないですか。そんな感じに使いまくっていると、色んなところからパクってきたせいで初めはバラバラだったはずの要素が、自分の中でだんだん馴染んできたりもします。そういうところもいいところじゃないかと思います。十分馴染んでくれば、もはや自分のものと区別がつかなくなってきます。好きなものが自分自身になってきます。

 ひとりの人から全力でパクれば、すぐにパクリとバレるかもしれませんが、100人の人から全力でパクって自分の中で馴染ませれば、ひとつひとつの要素は100分の1ぐらいしか出てこないので、これがバレにくくなる可能性があります。

 おかげでオリジナルと誤解してもらえることもあるので、オリジナリティがありますね?って言われるとありがとうござます!(節穴ですね)と思いますが、実はそもそも世の中で認められるオリジナリティというのはそういうものも多いのかもしれません。

 オリジナリティとは、無から何かを作りだしたということだけではなく、その人が好きな様々な何かからどれだけの割合で影響を受けたかというバランスそれ自体もまた、オリジナリティと呼べるものであるかもしれないからです。なので、僕にオリジナリティを認めてくれた人は、節穴などではなくそのパクリ方のバランスに価値を見い出してくれた素晴らしい人かもしれません。

 

 独創性を保ちたいためにできるだけ何も見ずに何にも影響を受けないように絵を描くという話もたまに耳にします。それはそれでひとつの考え方なのでいいと思うんですけど、実はあらゆるものにあえて影響を受けまくることでむしろ独創性を感じてもらえるということもあるのかもしれません。

 

 さて、ここからは僕が最近すごく影響を受けようとしている梶本レイカ漫画のファンアートをご覧ください。

 梶本レイカの新刊、悪魔を憐れむ歌の第2巻は12月9日(土)発売です!!!

www.comicbunch.com