漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

「シェンムー」と「龍が如く」の繋がりを妄想をしたけど特にそんなことはなかった話

 セガのゲーム機、ドリームキャストで発売された「シェンムー」がすごく好きで、学生時代に色々な遊び方をしながら4回通りはクリアしたと思います。シェンムーとは、格闘ゲームバーチャファイターをベースにしたRPG、として企画されたゲームで、中国人マフィアに父親を殺された主人公が、父が殺された謎とその仇の男を追って中国(まずは香港)に渡るというストーリーなのです。このゲームは章立ての物語として発表され、第一章として発売されたゲームは、昔の横須賀の町を舞台に、香港に渡るまでを描いたものでした。

 シェンムーの何がよかったかというと、いまひとつ上手く説明ができないのですが、僕はあのゲームの中で生活をしていたという気持ちがあります。本筋の物語として用意されていた目標もそこそこに、街を歩き回り人と会話し、バイトにせいをだして、ゲームセンターに入りびたったり、ガチャガチャを回したりして生活していたのです。僕はこのゲームを大学の部室でやっていることも多かったので、「いつもシェンムーをやっている人」と後輩に思われていたということもありました。

 何年か前のあるとき「そういえば学生時分はよくフォークリフトを運転したなあ」などと思い出したものの、それは実はシェンムーの中の体験であると、ワンテンポ遅れて気づいてしまうというようなことがありました。ゲームの中の話ですが、それは既に思い出なのです。あの夕暮れの公園で、ベンチに座っていたご老人に掌底重ねの技を教えてもらったのも、僕が現実に体験したことではなくシェンムーだったのです。

 

 シェンムーは香港から中国本土に渡るまでを描いたシェンムー2もやったのですが、こちらは1ほどはやり込まず、1回クリアしたぐらいでした。しかし、遂に正ヒロインが登場し、謎の一端が明らかになるというラストシーンの展開から、まさかその続きが出ないとは思わず、それからずーっと待っていたのです。

 シェンムー3の開発のためのクラウドファンディングが開始されるという報せを見た瞬間、僕はお金を出すという決断をしました。金額は少し考えましたが300ドルを投げ込みました。

 ただ、この金額は、僕の中では「新作のゲームを手に入れるための対価」ではないのです。僕はシェンムーを中古で980円で買ったので、あれだけ遊んだにも関わらず、ゲームの全体の売り上げには直接貢献しておらず、そして、売り上げに貢献しなかったゲームの続編が出ないことにずっと引っかかるものを抱えていたのでした。だから、その300ドルはこれまでの感謝と、このゲームが好きであるという自己表現の手段であったのです。浄財です。だから既に目的は完遂しています。さらにおまけにあの物語の続きが新作ゲームとして遊べるということなので、非常にお得な感じだなあと思いました(当初予定から発売の延期が発表されましたが、気長に待ちます)。

 

 さて3の開発が発表に至るまで、僕はシェンムーの続編をずっと待っていたのですが、モバゲータウンにおける「シェンムー街」のリリースや、中国で「シェンムーオンライン」が開発中であるという話を聞きつけ(立ち消えたようですが)、それがシェンムー3には続かなかったことでがっかりを繰り返していました。それだけに、3が発表されたときはとても嬉しくなってしまいました。

 しかし、僕は感情表現があまり得意ではないので、それに実際に大声を上げて喜ぶということは苦手で、できません。ただ、ネットの配信で見知らぬ外人がシェンムー3の発表に大声を上げて狂喜乱舞していた様子に、なんだか大変救われた気持ちになりました。僕は喜んだ顔も思うほどできず、嬉しい声も思うほどあげられませんが、こんなにも喜んでくれている人がいる。この人だけじゃなく、他にも沢山喜んでいる人がいるということをとても嬉しく思いました。クラウドファンディングのお金がみるみる集まって行く様子を、わがことのように喜んでリロードして確認をしました。本当に嬉しい気持ちになったんですよ。

 

 さてようやく本題ですが、シェンムー3が発表される前までの間、僕が抱えていた妄想があります。それは、シェンムーの単独続編の製作が難しいなら、同じセガから販売されている「龍が如く」シリーズが世界観としてどうにかして繋がってくれないかというものです。

 龍が如くシリーズは、歌舞伎町をモデルにした街を舞台に、ヤクザの抗争をモチーフにしたゲームです。僕はこちらもとても好きで、昨年末に発売された最新作である龍が如く6もクリアしました。6はシリーズ主人公の桐生一馬の物語としては最終章だったのです。とても面白かったのです。

 龍が如くシリーズには、シェンムーの遺伝子のようなものを感じています。まず街を作り込んで再現するということ、そしてそこに登場する日本人の普通の(そして奇妙な)老若男女との交流の中で、多くのストーリーを体験するということ。ゲーム内ゲームセンターの存在や、多人数を相手にした格闘アクションなど、シェンムーに存在したものを、膨らませたり簡素化したりして取捨選択し、そこに新たな要素も付加してより多くの人に届けるゲームとして再構成しているように思いました。

 龍が如くには、シェンムーの一章にあったような、町中の登場人物たちが時間や曜日に応じた生活パターンで独自に行動したり、家の中のタンスを隅々まで開けられるような、偏執的な作り込みはありません。それらは、当時としてはやり過ぎと言ってもいいほどの作り込みと思えるからです。しかしながら同時に、そのやり過ぎた作り込みこそが僕がシェンムーにとても心ひかれた部分でもあります。

 ゲームにおける大規模プロジェクトをマネジメントするための方法論からしてまだ手探りであっただろう時代に、数十億円の開発費をかけて偏執的な作り込みがされたゲームが誕生したこと自体を僕は素晴らしいことだと思っていて、それがあったという事実をとても愛しく思っているのです。

 そこから比較すると、龍が如くシリーズは良くも悪くも洗練されているように思います。どこに力を入れてどこに力を入れないかの取捨選択がきっちりされています。作り込みは必要な部分にのみ注力されていて、シリーズとして毎年のように新作が出るというきっちりとした製作の管理がされています。

 僕は龍が如くのストーリーが好きで、細部のばかばかしさが好きで、アクションゲーム部分が好きで、ミニゲームも好きで、ひたすらちまちまと色んなことを達成していくというゲームの構造が好きなので、毎年のようにその新作を遊んでいます。その一方、僕はシェンムーのことも少し思いだし、それがなくなってしまったことに胸を痛めていたのです。

 

 で、この龍が如くシェンムーの物語が繋がってくれさえすれば、シェンムーの続編を待望する僕の願望が叶えられるのではないかと考えていました。そして、僕はそこにいくつかの関連性を強引に見出していました。

 龍が如くの主人公である桐生一馬は背中には「応龍」の刺青が入っているのですが、応龍とは、中国の古代の王である黄帝とともに蚩尤と戦ったとされる龍です。そして、なんとシェンムーにおける敵役が属する組織の名前が蚩尤門というのです。蚩尤と戦うシェンムーの主人公、芭月涼黄帝になぞらえるならば、共に戦う桐生一馬はその仲間となります。この事実に気づいたとき、これは来たな!と思いました。

 

 そして、龍が如く0では、時系列が巻戻ってバブルの時代であり、それは時代的にシェンムーの一章と比較的近く、これはひょっとすればひょっとするのではないか?と思っていました。龍が如くシリーズには中国マフィアも出てきます。その流れの中でシェンムーにつながってくれーと思いましたが、結局そういうことはない感じでした(ただ、龍が如く0自体はめちゃ面白かったですが)。

 

 結局その妄想はてんで的外れであって、それとは別にシェンムー3が出ることになったので、もういいといえばいいのですが、ただ最新作の6には、中国マフィアと手を組んだ広島ヤクザの陽銘連合会が登場し、そこに巌見恒雄という男がいます。彼の背中に入った入れ墨で「白澤」なのです。白澤とは中国の妖怪で、この妖怪には伝説があるのです。黄帝に出会って知恵を授けたという伝説が。

 出ました!またしても黄帝です。蚩尤と戦う存在です。それはもしかしたら芭月涼のことなのではないでしょうか?これにより、龍が如くの物語の裏に芭月涼が実は存在している可能性を僕はまだ捨て切っていません。

 

 このように、彼らの背中の刺青には、シェンムーとの繋がりを強引に見出せそうなので、今後もシリーズとしては続くだろう龍が如くシェンムーが、なんらかの形で交錯するという期待を僕は持ち続けています。

 そのためにもシェンムー3がなんらかの成功を見せてくれるとよいのですが、今のところ僕にはその発売を座して待つしかないのです。