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漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

フェミニストという言葉の誤解と漫画の読解力の話

 僕が子供の頃(80年代から90年代にかけて)は、インターネットに繋がった端末がいつも手元にあって、すぐに何かを調べられるというような状況ではなかったので、新しい言葉が出てきたときに、その意味をいちいち調べるのは面倒でした。なので、辞書を引いて調べるなどということはせず、前後の文脈から何となく意味を類推して把握するということが今よりもずっと多かったです。

 

 「フェミニスト」という言葉があります。この言葉は子供の頃に読んでいた漫画の中で、会話の中にたまに出てきていて、当時小学生の僕は、文脈から勝手に判断して、「女性に親切な男性」みたいな意味として受け取っていました。

 

 ちなみに「フェミニスト」の辞書的な意味は以下のようなものです。

フェミニスト【feminist】  

1 男女同権論者。女性解放論者。女権拡張論者。
2 女性を大切に扱う男性。
[補説]英語で2の意は、gallant

 

 フェミニストを1の女権拡張論者という意味と捉えると、男性ではなく女性でもいいわけですが、僕が当時2のような意味で捉えていたのはおそらく、そのとき読んでいた漫画の中ではフェミニストと呼称された対象が男性しか出てきていなかったからだと思います。

 

 さて、この適当に意味を類推して認識していたフェミニストという言葉、僕はある漫画の描写を誤読したことで、より曲解して覚えてしまいました。

 それは、幽遊白書の12巻、暗黒武術会の決勝戦で主人公の幽助と戸愚呂(弟)の戦いが始まったあたりの描写です。

 

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 戸愚呂(弟)の攻撃が始まり、幽助はそれを躱します。戸愚呂の攻撃は凄まじく、まともに喰らうと大ダメージを受けてしまいそうです。しかし幽助は、ある攻撃に対して構えて静止し、戸愚呂(弟)の拳を正面から受け止めようとするのです。そこで戸愚呂(弟)は振りかぶっていた拳を止めて言います、「っと…失礼、この角度で攻撃するのはフェアじゃないね…」と。そして、幽助はこう返します、「…へっ、フェミニストだったとは知らなかったぜ」と。

 

 この展開を読んだ当時の僕の疑問は2つでした。「なぜ『この角度』で攻撃するのはフェアじゃないのか?」、そして「なぜそれがフェミニストであるということになるのか?」です。

 

 そして当時の僕の至った間違った解釈はこうです。「(何かの格闘技のルールに基づいて?)人には実は殴ると卑怯になる角度があること」、そして「フェミニストという言葉の正しい意味は実は、『フェアであることをモットーとする人』のことである」ということです。可愛いものでしょう?当時子供であった僕は、その安易な2つの結論に疑問を持ちませんでした。

 このように漫画を誤読したことで、僕は「フェミニスト」という言葉の認識を「女性に親切な人」から「フェアであろうとする人」というようにアップデートしました。なぜなら、後者の意味で認識することで、前者の意味での解釈も成り立つと考えたからです。記憶によると、しばらくその意味を信じていたはずですが、しばらくして間違いに気づくことになります(きっかけは忘れましたが)。

 

 そして辞書的な意味での「フェミニスト」という言葉の定義を認識した後に、再び幽遊白書を読むことで、僕はそれまで自分が漫画を間違った読み方をしていたことに気づきました。見落としていたのは2点、「戸愚呂(弟)の強力なパンチは、躱しても衝撃波でその先が破壊されること」、そして「幽助がパンチを受け止めようとした後ろには幽助の家族や仲間の女性たちがいたこと」です。これらは、描写としては目に入っていましたし、認識もしていました。しかし、なぜだかその展開を解釈する上では黙殺されていたのです。これらをこのシーンの解釈の中に含めるとすれば、正しい理解は以下であるはずです。

 

 戸愚呂(弟)のパンチは躱した先も破壊する→幽助の後ろには女性たちがいる→躱すとその女性たちが危険→なので幽助は戸愚呂(弟)のパンチを正面から受け止めるという決断をする→パンチを躱せない状況で殴ることを戸愚呂(弟)はフェアではないと判断して拳を止める→女性が危険にさらされないように気を遣った戸愚呂(弟)を幽助は「フェミニスト」と表現する。

 

 このシーン、今思えば特に難しいことはない読み方なのですが、絵によって表現されたことと、文字によって表現されたことを合わせて状況を把握しつつ、指示語に加えて馴染みの薄い「フェミニスト」という言葉が登場したというような状況が重なって、漫画の読解力が低かった小学生の僕は勘違いをしてしまったというお話です。

 

 このように、漫画の紙面の描写は同じでも、読者の読解力によっては状況を上手く認識できず、誤解してしまうというケースがあるんじゃないかと思います。例えばもし「くそっ、避けたらあいつらが危険だ!」という台詞を挿入し、「避けられない角度で攻撃するのはフェアじゃなかったね」「あいつらを気遣うなんてフェミニストとは知らなかったぜ」と台詞を改変すれば、当時の僕が誤解する余地は少なかったかもしれません。しかし、改変後の台詞は説明的なので、できれば避けたいところだとは思います。

 何かを読むとき、その意味が十分にとれるかどうかは読者の予備知識や、絵から何を読み取れるかという能力にかかっていると思います。それを間違えることによって突拍子もない解釈をしてしまうということは全然存在することではないでしょうか?それは、いい歳こいた今の僕にも、認識できていないだけで依然として存在することではないかと思います。

 

 ちなみに、似たような解釈間違いで意味不明になった経験で言えば、ドラゴンクエスト4の第四章における、キングレオの城から逃げ出すマーニャとミネアの姉妹に「じょうせんけん」を託す老人という描写があります。ファミコンであるために漢字表現が難しく、ひらがなで書かれた「じょうせんけん」という言葉の意味するものはもちろん「乗船券」でしょう。であれば、敗北した彼女たちはそれを使って船で国外逃亡をするのだという次の目的に至れるはずです。しかし、当時の僕はそのひらがなを「ジョウセン剣」だと思ったので、「ははーん、この強力な武器で戦えということだな!」と思って、一度は負けたキングレオに再び挑みに行こうとして、シナリオ上それはできなくて、困惑したりしていました。アホですね。

 

 みなさんも、辞書で調べたわけではない言葉、意外と間違って覚えているかもしれないので、正確な理解に自信がない言葉は一度調べてみるといいじゃないかと思います。今は便利なのでいつでもどこでも検索して調べられます。そして、その言葉が自分が思っていたものと違う意味であることに気づけたとき、では、なぜ自分がその言葉を間違った意味で解釈するように至ったのか?どのようなシチュエーションでその言葉が使われていたので、そう思うようになったのか?を思い出してみても面白いかもしれませんね。