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漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

2014年に1巻を買った漫画の話

 今年に1巻(短篇集や全1巻を含む)が出た中で、買った漫画に関して他所で喋ろうと思ったので、以下はそれ用のメモです。そして、喋るまでにメモり終わらなかったので、あとで書き足すというよくわからないことに。

 本棚からざっと探して数えたら27種類ありました(書き忘れてるのがまだ残っているかもしれませんが)。あと、年内にまだ福島鉄平の短編集などを買う予定なので、あとで追記するかもしれません。

 

以下、あいうえお順です。長いです。頑張って読む人がいたらお疲れ様です。

 

(1)アニウッド大通り(1〜2巻) 記伊孝

  • あらすじ:
  • 1980年代を舞台に、アニメ監督の父を持つ、漫画を描くのが好きな少年とその周辺の物語です。この漫画は、ニコニコ静画で連載されていて、Kindle版(個人出版)が出ていたのですが、秋ごろから紙でも出たので、Kindle版を全部持っているにも関わらず紙の単行本も買いました。
  • 感想:
  • この漫画のストーリーはアニメ監督という仕事、漫画を描くのが好きな少年の日常、その接点である家族の3点を軸に、1980年代という懐かしさでくるんだようなものであると思います。ちなみに個人的に1980年代は僕の記憶がまだ定かではない時期なので、実体験というよりはその残り香を感じていたような懐かしさですが。息子の話があり、妹の話があり、お父さんの話があり、お母さんの話があり、色んな人々の色んな視点から色んなお話が紡がれるのですが、とにかくキャラクターが良く、自由に動き回ることで周囲をかき回す妹が特に好きです。
  • エピソードで言うと、息子の真駒くんが、自分の描いた漫画を持ってクラスの女の子の家に期待一杯にドキドキしながら行ってみたものの、その女の子の友達に自分の漫画を笑われてしまい傷ついてしまうという話が、ワクワクと嘲笑の落差の気持ちがとても切なく、印象深かったです。また、まだ単行本化はされていませんが、お父さんが完成しないアニメ映画の現場に途中から入り、激務と心を鬼にしながら完成まで立て直すエピソードが、個人的に最近の自分の仕事の状況とリンクしているので、涙なしには読めません。
  • アニメや漫画やその周辺の文化について、体験することが面白いこと、作るのが面白いこと、その周辺の喜怒哀楽がこれでもかと詰まっているので、続きが楽しみな漫画です。
  • 試し読みできるみたいです:

  • アニウッド大通り / 記伊孝 - ニコニコ静画 (マンガ)

 

(2)あれよ星屑(1〜2巻) 山田参助

  • あらすじ:
  • 戦後、戦争の爪痕が土地にも社会にも人の心にもまだ残っている時代に、二人の男が再会をしました。戦地で上官と部下であった二人は、あるいは酒浸り、あるいは文無しとして、やるせない世の中をやるせなく生きています。明るい未来の見えない中でも、数多くの悲劇があろうとも、人間の強かさは人を生かしていくのです。
  • 感想:
  • 読んでいて、人間の強さのようなものを感じます。多くの悲しい出来事があるわけなのです。それは一人のちっぽけな人間にはどうしようもないようなことで、その中でも生きていかなければいけない、そして人間にはそれだけの素養があり、それが戦後の混乱期、誰もが何かを奪われ、それを取り戻そうと、他の誰かの何かを奪う者もできてくる時代を舞台に、色濃く描かれます。
  • また、山田参助の端正な筆致が、素晴らしく、ただ男が立っているだけで格好良い。それが動いて物語になっているんだから、格好良くないわけがないんですよ。僕はこの漫画を読んでいるときの満たされた感じが、欲しくて何度も読み返しています。そして、人は何があっても生きていくんだなあ、などと思うわけなんですよ。

 

(3)鬼切丸伝(1巻)

  • あらすじ:
  • 十数年前に連載されていた鬼切丸の続編(連載時よりも過去の話ですが)です。名前のない鬼の少年が携えるのは鬼を切る刀、鬼切丸。人間の存在する場所には悲劇が生まれ、悲劇は鬼を生み、鬼は人に悲劇をもたらします。人と悲劇と鬼はぐるぐると循環し、マクロで見ればどこでも出口がなく、そんな中で鬼を斬る少年は、鬼を斬ることでミクロの悲劇の循環を断つのです。人が人である限り、彼の少年の旅は終わりがない。鬼切丸伝では、歴史の陰、おとぎ話の陰に存在した鬼を鬼切丸の少年が斬るお話です。
  • 感想:
  • 子供の頃、前作の鬼切丸が大好きだったんですよ。続編があるなら読むしかないではないですか。本作では、歴史上の出来事の陰にいた鬼の鬼退治が行われるわけなのですが、その歴史の出来事と、大好きな鬼切丸の少年が合わさっていきひとつの物語となっていく感じがとてもよいです。前作から引き続き、人の悲劇から、生まれる鬼、感情の昂りとともに人から人にあらざるものに変貌する過程と、それを漫才のボケとしてときにツッコミのように現れる少年による幕引きが、物悲しさも相まってとてもよいです。本単行本の最後のエピソードでは、前作では語れることのなかった少年と鬼切丸の誕生秘話も収録されているので、ファンならマストバイ(締めが雑)。
  • 関連エントリー: 
  • 鬼について - 漫画皇国

 

(4)カツラアキラ(全1巻) 原作:鳥山明、作画:桂正和

  • あらすじ:
  • 原作が鳥山明、作画が桂正和の短編「さちえちゃんグー」と「ジヤ」を収録。後の銀河パトロールジャコと世界観を共有した銀河パトロールシリーズです。ストーリーはシンプル、悪さをする宇宙人を懲らしめる地球人少女のさちえちゃんや、銀河パトロール隊員ジヤの物語です。
  • 感想:
  • 最後のインタビューに書いてあるには、鳥山明が絵を描きたくないから始まったコラボレーションのお話ですが、もともと友人関係であった二人の共作ということで、互いにダメ出しをしまくったらしく、鳥山明の原作であるものの、鳥山明漫画によくある照れなのか、重要なものほどさらりっと描くのを、桂正和がもっとしっかり描くように引き戻したり、桂正和の繊細な絵柄が鳥山明のダイナミックさの上に乗ったり、鳥山明デザインを桂正和が直し、それをベースにまた鳥山明が次の話を作るというような、1+1が2以上になる雰囲気がとても楽しいです。
  • しっかりと抑揚のあるお話であるにもかかわらず、あっけらかんとした雰囲気で包まれることで、難しくなく楽しめる、ああ、エンターテイメントだなあと思う感じでした。だからこそ、戦闘シーンのダイナミズムが盛り上がりの部分として引き立つ感じがします。続きがあるならまた読みたいです。

 

(5)銀河パトロールジャコ(全1巻) 鳥山明

  • あらすじ:
  • こちらは、鳥山明が作画までやった漫画。「カツラアキラ」収録のものと同じ銀河パトロールシリーズで、凶悪な宇宙人を退治するために地球にやってきたものの、宇宙船の故障で帰れなくなった銀河パトロール隊員ジャコと、孤島で暮らす科学者の大盛が出会い、無事に帰るために奮闘する物語です。
  • 感想:
  • 大盛とジャコのかけあいがとにかく心地良かったので、ずっと読んでいたかったです。他の漫画と比較するのは作者に失礼となってしまうかもしれませんが、望月峯太郎の「バタアシ金魚」を読んでいたときと似た気分です。バタアシ金魚のカオルは、馬鹿で行動的で他人と噛みあいませんが、ソノコに好かれたい!というそれ一身の行動が大変可愛らしく、その噛みあわない関係が噛みあわないなりに変化していく過程に充足感を感じました。ジャコと大盛もそうで、自分は格好良い銀河パトロール隊員だ!ということにこだわる無邪気なジャコと、大人な大盛の会話は全然噛みあっていないものの、そのやりとりを通じて二人の関係性は変化していきますし、最後の最後で二人の目的が一致し、見事目的を達成するのが爽快感がありました。
  • どうでもいいですが、ドラゴンボールの頃の鳥山明の漫画では、トーンを貼るのが面倒なのか、空と言えば抜けるような白い空(神龍呼んだりすると黒いのもありましたが)というイメージでしたが、パソコンで描くようになったせいか、トーンで表現される夜空などが新鮮な感じもしました。
  • 関連エントリー(前に別でやってたブログ):
  • 銀河パトロールジャコが良かった話:漫画共和国 - ブロマガ

 

(6)久保ミツロウ能町みね子オールナイトニッポンやってみた(全1巻)

  • あらすじ:
  • 久保ミツロウ能町みね子オールナイトニッポンのオーディションに出て、見事枠を獲得し、2部で1年、1部に昇格して1年のラジオを続けたあと終わるまでを綴ったエッセイ。その記録の一部を久保ミツロウが漫画に、能町みね子が自らラジオ内容の書き起こしをしています。
  • 感想:
  • これを漫画の単行本に入れていいのか分かりませんが、漫画が描いてあればなんでも漫画だろうという雑な分類でよいことにします。ラジオを好きで2年間ずっと聞いていたので、その裏事情や、回想録が本としてまとまるのはありがたい限りです。これがあることで、ラジオの聞き返しも捗ります。
  • 久保能町ANNの好きであったところは、非常にネガティブな2人がネガティブなことを話しているのですが、僕自身がネガティブな人間なので、そこは大変落ち着く空間であり、そこにハガキ投稿してくる人々もまたネガティブな人たちが多かったので、聞いているだけですが謎の連帯感を感じられていたことです。
  • あのラジオが毎週なくとも、これからもポジティブであらなければいけないという圧力に屈さずに生きていきます。

 

(7)幻想ギネコグラシー(全1巻) 沙村広明

  • あらすじ:
  • 身も蓋もない感じのスコシフシギな短編を多数収録。あらすじをどう書こうと思って3分悩んで諦めました。
  • 感想:
  • 沙村広明のギャグというか、シリアスではない漫画は、とにかく会話の情報量が多いです。一つの文章の中に濃密に沢山のボケがつめ込まれているので、同じ分量の他の漫画と比較して、読むのに時間がかかりますし、読み終わったときにお腹いっぱいになります。本作は、作者がレギュレーションとして、「時事ネタ」「メタ表現」「古典以外のパロディ」を禁止にしたと書いてあるのですが、それでも同じ読後感なのが、すさまじい。
  • ともすれば荒唐無稽すぎるようなお話を、画力によってねじ伏せて説得力に変えたり、一発ネタのようなお話でも、その一発に精緻に描かれた画という形の二段目のロケットを積むことで昇華するのが、最新の科学技術と職人芸の粋を結集して、1ミクロンも狂いもない直方体を作った上で、それでジェンガをしているかのような馬鹿馬鹿しさで、作者にいいように転がされているような気分になります。そして、僕は転がされたいので良かったです。

 

(8)ケン月影劇場(1巻) 原作:梶研吾、作画:ケン月影

  • あらすじ:
  • ケン月影によるエロ劇画。「腹上死」「一夫多愛人」「大奥魔女騒動」「好色選挙法」「犬謀術吸」「潜入詐欺師」の6作品を収録。タイトルから内容を想像して頂けるとおそらく大体そのご期待の通りの内容だと思います。
  • 感想:
  • ケン月影といえば、子供の頃には小池一夫原作の「葬流者」などを読んでいましたが、近年は実話系雑誌でのご活躍を読むことが多かった感じです。本作はビッグコミック増刊号に載ったものがまとめられた本ですが、エロ劇画がコンビニ本でない普通の単行本として出ることはあまりない気がしていて(僕が知らないだけかもしれませんが)、読みたいと思ったときに読めるように保存性がよいものを手元に置いておくべきだよな!と思って購入しました。
  • 少々だらしないぐらいに肉感あふれる女性描写に加えて、登場するおっさんが本当によい顔をしているので、性的な状況におけるよい顔をしたおっさんの色んな表情を見たいときには、ケン月影のエロ劇画を読むしかないなあと思います。

 

(9)恋につきもの(全1巻) ふみふみこ

  • あらすじ:
  • 短篇集です。主に恋愛に関連した話が収録されています。表題作の「恋につきもの」は、他に好きな人ができたからと恋人に振られた女性が、その元恋人が好きだと言った男性に取り憑き、現れるという物語です。詳細に言葉にすれば延々と長くなってしまうような、微妙で繊細な人間の感情をさらりと描いたような漫画が多いと思います。
  • 感想:
  • ふみふみこは、ハゲでデブでメガネな中年男性を可愛く描く選手権があったら僕の中でトップ独走する作家です。本作に収録されている「村田克己54歳」は最初の単行本「女の穴」に収録されている「女の豚」および「女の鬼」にも登場した人物ですが、見た目も良くない中年の同性愛者である男性の持つ悲哀が抑制的でありつつも、大変丁寧に描かれていますし、僕はこのおっさんがすごく好きなんですよ。
  • 中年男性の悲しみは、物語の中であるいは若い女性に置き換えられて語られたりすることです。なぜなら同じことを語っても見栄えがよいからです。見栄えが悪いことで、自業自得と呼ばれたり、同情されなかったりします。特に他人に愛されないという悲しみがあった場合、それはいっそうです。だからこそ余計に悲しい。これに寄り添った漫画と言えば、他では「最強伝説黒沢」ですね。
  • 喜怒哀楽のように大きく分類できない人間の感情を描くのはとても難しいのではないかと思います。「私は何々と思いました」と直接書けば長くなる上に興ざめしてしまいますし、それらを直接書かなければ、読者の想像を周辺を上手く刺激して喚起しなければなりません。その読書体験は作者と読者の共作とも言えるので、読んだ人によって微妙に異なる内容と捉えられるのかもしれませんが、少なくとも僕は作者の意図通りか勝手な勘違いかは分かりませんが、色んな気持ちが喚起されたので、読んで良かったなあと思います。

 

(10)さくらの園(1巻) ふみふみこ

  • あらすじ:
  • SFなのにゆるふわな世界観。どことも知れない性の情報が隠蔽された世界の中で、女子中学生たちが、日常を送りながら性の情報を獲得していったりなんかしながらゆるふわしたり、性について知ることで騒然としたりしています。
  • 感想:
  • ふみふみこの漫画は性に関するものが多い印象ですが、本作はSF的な舞台設定となっていることでいっそうに象徴的に扱われているように思います。我々はなぜそうであるのかということを、外部の人たちに教えられ理解しますが、この物語の中ではそういった外部が排除されているために、自分たちでこれは何であるのかを理解し、解釈しながら獲得しなければなりません。
  • 可愛らしいキャラクターたちが、僕たちが既に知っていることを、知らないがゆえに苦悩している様子を読みながら、では自分が知っているというのはそういった獲得をしたものなのか、もしかしたら、誰かが言ったことをただ鵜呑みにしただけで、自分は何も理解していないのではないかなんてことを思ったりなんかもしましたが、これは僕が勝手に思っているだけかもしれません。
  • 試し読みできるみたいです:

  • さくらの園 | Champion タップ!

 

(11)The Mark of Watzel(全1巻) 武富智

  • あらすじ:
  • 手の施しようのない重い病気の子供エリンに残された最後の手段、想像の中で病魔に立ち向かうサイモントン療法のため、エリンが再々…放送で夢中になった怪傑ワッツェルの主人公を演じた老役者ジェイソンが雇われました。今は詐欺師まがいのジェイソンは無駄と思いながらもエリンを勇気づけたりなんかするのでした。
  • 感想:
  • 漫画は絵だな!と思いました。別の漫画を読んではネームだな!と思うこともあるので、僕の主張はころころ変わります(念のため言うとこの漫画はネームもすげえ良いです)。言葉は読み込まないと自分の中で再生できませんが、絵は一瞬で心の中に入り込んできますから、瞬間的に処理できる情報量は絵の方がずっと多いと思うんです。そして、この漫画ではそれがとても効果的に使われています。許容量以上の人の感情の情報が絵を通じて一気に自分に入ってくることで、読んでいて大変に昂ぶってしまいます。
  • 現実なんてものは理不尽に決まっているので、世の中には希望の物語が必要なのだと思いますが、ただ単に希望と幸福だけが語られる物語はご都合主義に感じてしまいます。この漫画はハッピーエンドですが、そのハッピーエンドはいうなればおまけのようなものだと思います。その過程において、どうにもならない中で、奮闘し、人の心が変わっていく様が読んでいて満たされる感じなのです。ハッピーエンドはそんな人々に対する最後のちょっとしたご褒美みたいなものではないでしょうか。
  • 世の中は大体どうにもならないわけです。どうにかしたいと思っても人ひとりの力で変えられるものなんてタカが知れています。じゃあ、諦めるのかという話ですよ。でも、諦めたくなるぐらいに壁は沢山あるわけですし、上手くいったり、いかなかったりを繰り返しながら、人は生きているんですよ。人は生きたり死んだりしますが、それは割りとどうにもならないですが、生かしたいと思ったり、生きたいと思ったりすることが、自分の限界として、重要なんじゃないのかなあとか、読んでいる中で思考が暴走したりしました。
  • 関連エントリー
  • 「The Mark of Watzel」を読んだ僕について - 漫画皇国

  • 試し読みできるみたいです:

  • となりのヤングジャンプ : アオハル特集

 

(12)塾生★碇石くん(1〜3巻) 荒木光

  • あらすじ:
  • 「ヤンキー塾へ行く」の続編、宇宙飛行士になる夢を持った寡黙なヤンキー碇石くんが、塾へ通って勉強をしたりする漫画です。前作では、ヤンキー成分が多かったですが、改題した後にはタイトル通り塾描写が多くなりました。碇石くんは順調に勉強ができるようになって、遠い夢ではあるものの前に進んでいますが、今度は同じ塾に通う女子高生や中学生に勉強を教えると立場も得て、邁進しています。
  • 感想:
  • 「ヤンキー塾へ行く」時代は室田先輩が大好きでしたが、仕切りなおしてからはしばらく出てこない(連載では最近再登場)ので、碇石くんの別の側面が新登場したキャラクターによって引き出されます。碇石くんはいいやつですが、あまり喋らないので、彼の良いところを引き出すのは周囲の人間ですし、キャラが変われば別の側面が見えてくるのが面白いなあと思いました。
  • 慶応に進学したビリギャルの話を意識しているのかなと思ったのですが、勉強ができなくて留年した女子高生に碇石くんが勉強を教えていく話になっていたりするんですけど、碇石くんがいいやつなので、そういうことをしながら、碇石くんが好かれていく過程が大変微笑ましくてよいですね。それを室田先輩が空気読めずにぶっ壊しにかかってしまう感じも大変好きです。
  • あと、連載開始時より絵柄がリアルな方向に振って、どんどんうわー、上手いなーという感じに進化しているのですが、女の子キャラの写実っぽさを漫画に引き寄せている感じの独特さが面白いです。

 

(13)人口精霊タルパちゃん(全1巻) ふみふみこ

  • あらすじ:
  • タルパとは、自分が頭の中で作り上げた架空の喋り相手のことらしいです。作ることに成功すれば、まるで他人と話しているかのように会話をすることが可能で、それによって孤独な人間が一人でも一人じゃなくなることができるようです。そんなタルパを作り出し人々のお話が色々収録されています。
  • 感想:
  • タルパほどに具体的ではありませんが、僕も高校生ぐらいまでは架空の話し相手がいました。その日読んだ本の話なんかを人に話したくて話したくて仕方ありませんでしたが、それを熱心に聞いてくれるような人が日常的にいない時期が長かったので、自分の頭の中の人に学校の行き帰りなど自転車を漕いだりしている暇な間に話し続けていたのです。なので、ここで描かれている人々に共感するところが多かったですし、ときにダバダバ泣きながら読みました。
  • 好きなエピソードは、31歳公務員の地味な女性が、一人で部屋でコスプレをしつつ、魔法少女につきものの動物型のタルパを作る話です。子供の頃、テレビの向こうのキャラクターに憧れたものの、自分にはそんなフリフリの服装が似合わないので、そっと心の底にしまっていたのに、その当時の魔法ステッキが復刻されたのを買ってしまったことで再燃、自分の家の中だけではその気持ちを全開にして、作ったタルパと会話します。
  • テレビの向こうのかっこいいキャラクターに憧れるのは、冷静に考えれば痛い話ですが、その冷静というのは客観ということだと思いますし、主観で考えれば憧れたいから憧れているわけです。でも、周りの目を気にしてしまう人間は隠さざるを得ないのです。それは社会性かもしれませんが、それゆえに悲しい。自分が本当に望むものにすら蓋をしなければならないからです。社会性と区別をしつつも、その気持ちを大事にしているということが、それだけでなんだか泣きそうになってしまいます。その正しさを周囲に認めてもらいたいわけではないんですよ。ただ、自分の中だけで大事にしたいのですよ。
  • ちなみに、僕が憧れたののひとつは「魔神英雄伝ワタル」。最近もアニメを見返していたので、その間だけは少年魂を自由にさせてあげたりしています。
  • 色んな立場の人がそれぞれの孤独を抱えながら、タルパの世話になり、そして、タルパを必要としなくなったりする過程にとてもしんみりするので、しんみりするなあと思いました。

 

(14)好きだけじゃ続かない(全1巻) 松田洋子

  • あらすじ:
  • 表題作の「好きだけじゃ続かない」は、地方都市に住む中年男性が、若い頃のボーイだった自分がガールにミーツした頃の思い出を振り返りつつ、その女性と再会するお話。作者の自伝的漫画「平凡なヨウコちゃん」も収録。
  • 感想:
  • 読後に最も印象に残ったのが、ヒロインであるユカリの唇の描写のエロさでしたね。
  • 大森靖子の「ノスタルジックJ-POP」に「ちょうどいいところでやめられる人がハッピーエンドよ」という歌詞があって、通じるものがあるなと思いました。表題作の中で、ボーイとガールはひかれあうものの、お上品な家庭のヒロインと、そうでもない家庭の主人公では、 色んな差がくっきりしてしまい、人間関係が上手く続けられなかったのですが、歳をとって再会してさてはてという感じです。
  • 物語にはいい感じの終わりがありますが、人生にある終わりは死だけです。ハッピーエンドは、いい感じのところで記憶を切っているだけで、その先がありますし、その先はハッピーでなかったり、ハッピーが継続したり、様々なのです。上手くいかないことの上手くいかなさみたいなものが、自分の中で色んなものが始まってリ終わったりを繰り返す中で、年々自分に響いたりするようになっている感じがしました。
  • 「平凡なヨウコちゃん」の自伝的な内容を追いつつ、今まで他の漫画で読んできた貧乏描写のリアルさはこの辺で培われたものなのかなあと思いました。僕自身があまり柄の良くないところで生まれ育ったので、その辺の状況に共感できるかできないかには、色々微妙な感じのこだわってしまうところがあったりするんですよ。

 

(15)脱衣転生(全1巻) 原作:中川トシヒロ、作画:井上紀良

  • あらすじ:
  • 千秋楽の次の夜、国技館で開催される金持ち連中だけが入れる秘密倶楽部、そこで行われるのは脱衣麻雀です。そこには様々な境遇の女性が、やまれる理由から脱衣麻雀に興じることとなり、脱がされていく…それだけの馬鹿馬鹿しい(褒め言葉として)漫画です。
  • 感想:
  • 雑誌で今回も馬鹿馬鹿しいなあと思いながら毎回読んでいましたが、単行本は小池一夫のために買いました。メロンブックスで買うと小池一夫クリアファイルがついてきたのです。愛用しています。この漫画の最後では、数々の女性を脱衣麻雀に陥れてきた黒幕の女性をこらしめるために、漫画の中で数々の女性キャラを脱衣させてきた原作者、小池一夫がやってくるのです。小池一夫は彼女の脱衣に欠けている愛を説き、女性を全裸(マッパ)にしてしまうのでした。その小池一夫がとても格好良く素晴らしいです。
  • 全1巻ですが、雑誌の方では続きが載ったりしているので続刊があるかもしれません。
  • 関連ツイート:

 

(16)ちーちゃんはちょっと足りない(全1巻)

  • あらすじ:
  • 年齢の割に幼い高校生ちーちゃんと、その友達ナツを中心に、その周辺で巻き起こる物語。
  • 感想:
  • 阿部共実の漫画はとても不安になることが多いです。油断した心の隙をぐさりと突かれてしまうからです。ちーちゃんは無邪気ですが、無邪気だからと言って罪を犯さないとは限りません。むしろ、無邪気に自分の利益を求めるからこそ、罪を犯してしまうということもあるでしょう。
  • 「ちょっとくらい恵まれたっていいでしょ私たち」というナツのセリフが、響いてしまうのですが、それは自分たちが周りに比較して恵まれていないと感じているからこそ、それが自分たちがしでかしてしまったことに対する、自分の中で言い訳として機能してしまうということだと思うんです。それは、怖いことですし、自分がハマってしまうかもしれないことなのです。自分が恵まれていないと自己認識していればしているほど、ワガママに振る舞う自分を許してしまいますが、それは自己認識の問題なので、周囲の人には理解が得られないのです。そこから先は沼です。自分を許せば許すほどに、周囲との溝が深まってしまうのです。
  • その先に自分で至ってしまう自業自得感というのは恐ろしいもので、自分を許すための材料を使いきってしまったあとに、逃げ場がなくなりますから、今まで溜めてきたすべてのものを受け取らなければなりません。伸びきったゴムに衝撃を与えてしまえば容易に切れてしまいます。こういう不安を的確についてこられてしまうのが、この漫画の恐ろしく感じるところで、そして、その恐ろしさが伸びきったところで、ちーちゃんだけは無邪気ゆえに許してくれるのでした。セーフティーゾーンが残されている優しさがあるように思います。
  • 誰だって恵まれたいわけですし、それは否定できないですが、とはいえ恵まれるとは限られませんし、何もせずにただ恵まれたいと望むだけの人間は、それゆえに望むとは逆方向に向かってしまうかもしれません。それがとても恐ろしいと僕は思うのです。

 

(17)ちひろさん(1〜2巻) 安田弘之

  • あらすじ:
  • 風俗嬢の物語「ちひろ」の続編です。本作では、お弁当屋のちひろさんとなって、様々な人と関わったり関わらなかったりしています。
  • 感想:
  • 自分というのが何なのかが時折分からなくなります。自分とは何かを語るときに、ついつい肩書きなんかを言ってしまったりします。他にも何かの本が好き、何かの音楽が好き、家族がどう、恋人がどう、周囲にどのように思われているなど、自分とはどういう人物かを語るとき、そこには沢山の外面的な要素があるものだと思います。では、自分の外のものが自分を規定するかと言えば、そういう要素もあるでしょうが、そうでない部分もあるはずです。例えば、ちひろは元風俗嬢ですが、元風俗嬢という肩書きが知られた時点でちひろを見る周囲の目は変わります。
  • ちひろは、人に外部の要素を求めずに、その人の目を見つめ、そこから読み取ったものだけで他人と接するような人物です。人間は自分が幸福になるために自分に欠けたものを探して、それさえ埋まれば幸福に到れるなどと考えてしまいがちな気がしますが、それは想像上の条件であって、実際はそうでもない気がするんですよ。作中では、家族サービスに余念のない両親と良い子の子供たち、お金に困っているわけでもなく、家族旅行にだっていける、一見幸福な家庭ですが、幸福っぽい条件が整っているからといって幸福とは限らないわけです。その家の子供である少女は、ちひろと出会うことで、自分を背景の関係ない一人の人間として見てもらうことで、その幸福を強いられる閉塞な環境から脱する手がかりをえることができます。
  • この物語はすごくすごく優しい話と思うんですよ。それは、人間はある規範に沿っているから正しいわけでも、幸福なわけでもなく、例えば周囲が楽しんでいるのだから、自分もそう感じなければいけないというような暴力的な幸福から抜けだしてもいい口実を与えてくれるからです。人間は自分の幸福を追求していいですし、その形は必ずしもみんなが最大公約数的に持っているそれでなくてもいいと言ってくれているように思えたのでした。
  • 関連ツイート(インターネット良い話):

 

(18)中学性日記(1〜2巻、3巻は今月発売予定) シモダアサミ

  • あらすじ:
  • 「性」に関する興味関心やコンプレックスを持つ中学生男女に関する一話完結の漫画です。
  • 感想:
  • 性というのは、人間誰しも持ちつつも、気軽に他人に相談するには恥ずかしいというような悩み苦しみを抱えつつも、個人の中で完結してしまっていたりもする、面白い領域だと思います。本作に登場する人々は毛が生えているの生えていないのだの、大人になってみればどうでもいいようなことで、一喜一憂し、まだ性欲求や恋愛などにつける名を持たないために、自分の中で整理できないままに混沌とした気持ちのままで、行動して、失敗したりする感じが楽しいです。
  • 同じ学校にいる人々が登場人物なので、話が進むにつれて、それぞれが悩み苦しんでいる男女が別の話で絡んだりする感じの面白さも出てきました。
  • 試し読みできるみたいです:

  • 中学性日記 / シモダアサミ - ニコニコ静画 (マンガ)

 

(19)逃げ腰怨さんぽ(全1巻) イシデ電

  • あらすじ:
  • 作者のイシデ電、編集の皿子さん、そしてたまに作者の友人の志村貴子が登場する、怪しげなスポットに行って体験してみるエッセイ漫画です。
  • 感想:
  • 連載時は知らなかったのですが、同作者の「みやこむーむー」を買うときに近くにあったからついでに買いました。面白かったです。深夜のお墓や寺、洞窟のようなものから、オカルトっぽいお店や、探偵、葬儀屋、裁判傍聴などの、色んな場所に、作者が嫌そうに行くのがよいというか、そりゃ嫌でしょうってな感じのことが、嫌そうに描かれていて、嫌だろうなあと思いました。
  • あと、作者のイシデ電の絵が僕はすごく好きで、特にこの漫画では実在のスポットの絵が描かれているわけなのですが、写真を単純にトレスするでもなく、完全に想像でもなく、太めの線でざくざく空間を切り分けて描いてる絵の裏に、実際の光景が想像できる感じの、何が言いたいか上手いこと言い表せませんが、漫画漫画した省略の美学と、写真の精細さの中間を力強く進んでいる感じが目のご褒美なんですよ。十五文字以内で言うと「絵が好きなので見てて楽しい」です。

 

(20)春風のスネグラチカ(全1巻) 沙村広明

  • あらすじ:
  • 1933年のソビエト連邦のある別荘に、足のない車椅子の美少女と、寡黙な従者の二人連れが訪れます。どう考えても裏がある、彼女たちの目的は何か?帝政ロシアの終焉の裏に隠された、それらの謎が徐々に紐解かれていく一方、ツンデレおやじとツンデレ美少女のダブルあるいは、従者を含めたトリプルツンデレ話が進行するのでした。
  • 感想:
  • 僕は死ぬまで、その時点ではちっとも意味が掴めない思わせぶりなセリフの応酬にぐいぐい引きこまれて漫画を読み始めてしまうのだろうなと思います。ロシア革命あたりの知識がおぼろげであるのも手助けしてか、ああ、そういうことだったのかという謎の氷解を理想的な形で味わうことができました。
  • 登場人物たちは、あまりべらべらと心情を喋ったりしませんから、微妙な表情から、感情を読み取り、少ない口数には重く意味が込められています。それらから、人々の間の絆の重さが読み取れて非常によいですね。
  • ロシアは飛行機の乗り換えでちょっと降りたことがあるぐらいなので、ここで描かれているロシアがリアルなロシアかどうかは分かりませんが、少なくとも僕はそこにリアリティを感じてしまいます。この物語の舞台は仮に歴史関係なくても、生物の活動の停滞しがちな寒い地域でなければいけないというか、南国の気候ではこの雰囲気は出ないだろうなあと思ってしまいますね。
  • 単行本1冊で、じんわりと満たされる良い読後感なので、良い映画を一本見るのと似た感じかもしれません。

 

(21)まちあわせ(全1巻) 田中雄一

  • あらすじ:
  • 「害虫駆除局」「プリマーテス」「まちあわせ」「箱庭の巨獣」の4作品を収録した短篇集です。全作品に共通するものとしては、人と異形、それらの関わりあいの中で見えてくるものといった感じだと思います。
  • 感想:
  • 人間について何か考えるときには、人間以外のものが出てくることで、ようやくそれとの比較で浮かび上がってくるのかなあと思います。この短篇集の中には様々な種類の異形の生物が登場し、人との関わり方も物語によって異なります。そして、その中に人間の異なる側面が表出しているように思いました。
  • 人間と人間以外では、基本的に正解が異なるために、何が正しいのかが異なる同士が共生することは難しいです。しかしながら、生物界で昆虫と植物や、動物と寄生虫がいい感じに共生していることを考えると、たまたま上手くいくこともあったりします。そんな感じに上手くいかなかったりするのだと思います。
  • 人間がいかに他の生物のことを思いやっても、他の生物は人間とは異なる論理で人間に襲いかかってくるかもしれませんし、それが人間にとって脅威でも、彼らにとっては日常かもしれません。立場を変えて、人間以外にとってみれば、それが人間に対して抱いている脅威でもあると思うのです。一方、人間と共生することで、次代に子孫を残す生物や、むしろ人間が人間を人間以外に仕立てあげることで、自分たちの利益を得ようとしたりもします。これらの物語の中では、そういった状況が、登場するグロテスクな異形たちによって炙りだされ、普段は目をつぶっているような部分に目を向けさせてくれるようになった気がしました。
  • あとは絵が素晴らしいですね。異質であるということが一目でわかる造形が、生理的な嫌悪感を喚起し、これらの物語に説得力を持たせているように思いました。

 

(22)水色の部屋(上巻) ゴトウユキコ

  • あらすじ:
  • 幼いころにレイプされる母親を見てしまった主人公は、母親に対する性的な欲求を胸に抱いてしまいつつ、それを具体的な行動に移すにはいたりません。しかし、彼とは水と油のようなクラスメイトのイケメンが、主人公には決してできない積極的な行動を繰り返すことで、主人公は自分には満たすことのできないはずだった性的欲求に手をかけてしまい、さてはてという感じの上巻です。
  • 感想:
  • 母親に対するエロ目線というのは、自分に照らし合わせてみると拒否反応のある話題です。しかし、人間と性は切り離せないものですし、親にも性があるからこそ自分が生まれてきているわけです。そのなんとなく嫌な気持ちがするにもかかわらず、確実にあるものについて、目を向けさせられるのがこの漫画です。
  • 内向的で積極性がなく、妄想は捗るものの実行には至らない、至れない、そんな主人公をあざ笑うかのように、外交的で積極的で行動的なイケメンが、主人公の幼馴染や母親に対して、奔放にその欲求を表明してみせます。自分とは全く異なる存在でありながら、自分の欲求がイケメンの彼によって満たされ始めるという、矛盾したような状況が今後彼に何をもたらすのかから目が離せません。
  • 嫌な漫画です。嫌であると同時にエロいので、だからもっと嫌ですし、後ろ暗い部分を暴かれているような、これを口実にして自分で暴いて自傷的な快楽に身を委ねているような気もします。上巻は衝撃的な部分で終わっており、この後に何がくるのかがわからないので、ああ、嫌だ、嫌だなあと思いながら続きを待ち望んでいるような感じです。
  • 試し読みできるみたいです:

  • 水色の部屋 - コミック | ぽこぽこ

 

(23)みやこむーむー(全1巻) イシデ電

  • あらすじ:
  • 5歳の女の子、木下みやこの物語です。ご近所を冒険したり、新しい人と出会ったり、知らない場所に行ってみたり、色んな経験をしたりします。
  • 感想:
  • 南国少年パプワくんの作者コメントに「完全無欠の少年は、コンプレックスだらけの大人になります」という言葉があって、読んでいた当時の少年の僕は意味がよくわからなかったのですが、今になってみればわかるような気がします。自分を振り返り、そして、今の少年を見るにつけ、多くの少年は完全無欠なんだと思います。それは経験が少ないために、自分の体験してきたものだけがその時点の全てで、他人の感情を自分の中で上手に再生することも稚拙ですから、自分が思うことが世の中の全てです。自分だけが正しく、自分が王様です。そして、それらの幻想は成長にするにつけ打ち砕かれます。なぜなら客観的に見れば完全無欠なのでは全然ないからです。完全無欠であればあるほど、多くの壁にぶつかり、それらはコンプレックスという形で身に刻まれてしまいます。ちなみに、この言葉のあとには「でも、コンプレックスを克服できるから、人間は面白い」と続くわけなのですが。
  • 本作、みやこちゃんの世界も完璧で、自分の少ない経験の中で培われた自分の世界で生きています。が、外部の人々と出会うことによって、その世界が徐々に広がっていく過程がとても微笑ましく感じました。
  • 大人と子供の感情レベルの境界なんて実はほとんどないんじゃないかというのが最近の印象なのですが、大人は積んできた経験から、それをいい感じにごまかす術に習熟しているだけなのではないかと思ったりするのです。本作のみやこちゃんのように、子供が素直で一生懸命に生きている感じは、実は大人もまだ持っているのではないかと思うんですけど、色んなしがらみによってそれを押さえつけてしまっていて、だからこそ、それらを素直に解放している感じの子供の描写をみて、その自由さにああいいなあと思ってしまったりするのではないでしょうか。実際の子供にそれを自分にぶつけられると腹が立つこともありますが。
  • なんだか、書いていることがよく分からなくなりましたが、読んでいるうちに一生懸命に生きるということは大事だなあと思ったりしたんですよ。

 

(24)ムシヌユン(1巻) 都留泰作

  • あらすじ:
  • 5回の院試を受けても大学院に受からない昆虫博士志望の主人公が、夢破れて子供の一時期を過ごした沖縄に帰ったもののそこで遭遇したものとは。南の島を舞台に白ブリーフ1丁の男が、謎の宇宙的現象によって奇怪に変身した男性器を携えて奇行を繰り返します。
  • 感想:
  • これが何の漫画なのか、まだ測りかねているのですが、その答えは完結するまで出ないのかもしれません。前作のナチュンも、全然何の漫画かわからないままに読み進めていましたから。ただ、何がなんだか分からないにもかかわらず、強烈に「面白い!」という印象だけが残るのがなんだかわからなくて、面白いです。
  • 昆虫の真社会性の話が作中に出てきたりしますが、主人公の社会性的なダメさ加減が関係あるのかと思いながらもよく分かりません。院浪を繰り返し、親にも見放され、バイトしようにもキョドって拒否され、大家に説教され、学者さんには馬鹿にされ、子供の頃の知り合いとも上手くコミュニケーションをとれなくなってしまっています。それらの気持ちが、僕にもわかってしまうのが、自分を重ねてしまって辛いのですが、この絶望の深さが、彼がこれから巻き起こすことに関係しているのかどうなのか、彼が繰り返す奇行を読みながら、もう、やめなよ、なんとかちゃんとしようよと思って心を掻き乱されながら、見守る感じです。連載のペースもゆったりしているので、続きが読みたくてもどかしい感じですが、続きを楽しみにしている漫画のひとつです。
  • 関連エントリー(前作について):

  • 「ナチュン」から何を読み取るかという話 - 漫画皇国

 

(25)娘の家出(1巻) 志村貴子

  • あらすじ:
  • 両親が離婚し、お父さんは、同性愛をカムアウトしたことで、別の男性と同居、一方、母親は再婚、その間にいるまゆちゃんは、家出をしてお父さんカップルの家にやっかいになったりします。そして、まゆちゃんは口に出さないもののデブ専であり、お父さんの彼氏も、お母さんの彼氏もタイプなのに、出会った途端に失恋してしまうような状態なのでした。色んな女の子の色んな事情が物語られます。
  • 感想:
  • 志村貴子の漫画に出てくる、無表情フェイスが印象的な女子、「敷居の住人」のキクチナナコや「放浪息子」のさおりんなどの無表情は、無表情なんですけど、感情が表に出ていないだけで、その下で色々思ってるんだろうなあという感じがとても魅力的です。本作の主人公である、まゆちゃんもまた無表情が印象的な少女ですが、でも、裏では色々と思っていて、ただ、それが出ていない感じが、ああ、魅力的だなあと思いました。
  • 志村貴子の漫画はモノローグが印象的なことが多いですが、誰に向けているわけでもなく、それを口に出すわけでもない、しかし、確かに思っていて、ひとりでそう思っているという感じがとても良く、それを覗き見できる読者だけの特権という感じで、読みながら、「いやあ僕は分かっているよう」などと思ってしまうのが、我ながら気持ち悪くて、大変気持ち悪いですね。
  • 現実は漫画ではないから、他人がひとりで何を思っているのかは分かりません。道ですれ違った知らない人も、色んな事情を抱えていて、顔には出さずとも色々思っているのかもしれませんが、テレパシーが使えるわけでもないので、わからないですし、わからないなあと思ってしまいますし、考えても仕方がないです。ただ、悩みが何一つない人もいないのではないかと思っていて、みんなそれなりに何かを抱えて、それをいい感じに折り合いをつけながら生きているんだろうなあと思ったりなんかするんですけど、漫画の感想って感じじゃなくなってきました。
  • 色々抱えているものの、それを振りかざし過ぎずに、あくまで抑制的に淡々と自分の中で処理していく女の子たちの感じの独特の空気感が、読んでいて落ち着く感じがしますし、読む僕も淡々と、掲載誌が休刊してしまいましたが、続きが出たあとでも、また淡々とその空気に包まれたくて読むような気がします。
  • それはそうと、作中に出てくるおデブ男性たちが、たいへんデブ可愛いので、たいへんよろしいと思いました。

 

(26)妖怪ハンター 稗田の生徒たち 夢見村にて(1巻) 諸星大二郎

  • あらすじ:
  • 日本の各地に伝わる民話や伝承の陰にある奇怪な事件の裏側を探るシリーズの最新作。本作ではいつもの主人公稗田礼二郎ではなく、過去作に登場した天木薫や大島潮を主人公とした「夢見村にて」と「悪魚の海」を収録。
  • 感想:
  • これを1巻の発売と言っていいのかは分かりませんが、新シリーズで1と書かれているので1巻ということにしました。妖怪ハンターシリーズが好きで、好きだから好きなので、自分の中ではもはやそれだけでいいのです。
  • 諸星大二郎の漫画は、そのバックグラウンドにある神話や民俗的な知識もさることながら、それを映像化する画力にも強い魅力があるように思います。本作に収録されている、夢の中で襲ってくる怪物や、魚化していく女性など、一目でギョッとしてしまいますし、それが魅力的に映ります。
  • 今年は、諸星大二郎漫画の復刊も沢山あったので、持っていなかった話が収録されている本をまた色々と買い込んでしまいましたが、昔買ったものと内容がかぶっている本も色々あるので、人間は何度諸星大二郎の同じ漫画を買い直す必要があるのか…という気持ちになりつつも、やはり未収録だったものとか描きおろしとかを読みたいので、買ってしまうという都合のよい客になってしまっています(特に後悔もしていなければ、別に文句もありません)。
  • 来年も新作と復刊を追いかけることになりそうな気がしています。

 

(27)りとる・けいおす

  • あらすじ:
  • 女子小学生3人組が、なんやかんやするギャグ漫画です。
  • 感想:
  • 駄目子ほど可愛いと言いますが、この漫画に出て来る子供たちの駄目さ加減が愛しいです。絵柄が独特のアメリカン人形劇というか、セサミストリートというか、そういう雰囲気を持っていて、直接的な可愛らしさをあえて外しているのが、駄目さと可愛さが相殺されず、むしろ拍車をかけているのですごく良いと思います。
  • 好きなエピソードでは、欲しいぬいぐるみを親に買ってもらう良いアイデアと称して、店頭でそのぬいぐるみをべろりと舐めて、親と店員さんに見せつける!という、そのアカンやつを得意げに一生懸命やる馬鹿さ加減が、現実で身内ならシバくけど、漫画だと心地良いレベルに留まって心地よいですね。
  • 連載を毎回楽しみに読んでいます。
  • 試し読みできるみたいです:

  • りとる・けいおす / 涼川りん - ニコニコ静画 (マンガ)

 

所感

 やっとメモり終わりましたが、こうやって並べてみると、「りとる・けいおす」「みやこむーむー」「ちーちゃんはちょっと足りない」とか、「銀河パトロールジャコ」など、得意げな子供が出てくる漫画を好んでいるような気がします。他に「まんが親」だの「flat」だの「干物妹うまるちゃん」だの、持っている漫画にはそういうのが多いですし、そういうのを求めて読んでいる気がします。現実で身内の子供だとイジワルしてからかってしまったりもするので、漫画で読んでいるぐらいの距離感がちょうどいいのかもしれません。

 もう一つは、悲哀を背負ったおっさんが出てくるのも多い気がしていて、その変に自分のツボがあるんだろうなと思ったりします。

 基本的に雑誌で読んでいて、好きになった漫画家のものを買い集めることが多いのですが、そのせいで、続編ものや漫画家名買いの漫画が多いような気がしていて、全く新しく買い始めたものはそんなにない気がしました。どんどん沢山、新しいものを読む方がいいと思っているわけでもないのですが、なんだか保守的な感じになってきたなと思います。だからといってどうするわけでもなく、今年も淡々と読みたいものを買ってきましたし、去年もそうだったと思うので、来年も多分同じです。

 

 とりあえずは以上。