漫画皇国

Yes!!漫画皇国!!!

「アゲイン!!」について

 週刊少年マガジンで連載している久保ミツロウの「アゲイン!!」がすごく好きというか、主人公の今村がすごく好きなので、キャラ萌え的に読んでいる感じがあります。あと今村母と今村祖母も好きです。

 

 アゲインは、高校生活を無為に過ごしてきた今村が、卒業式に階段から転げ落ちたことでタイムスリップし、入学式からやり直すという漫画なのです。とはいえネガティブ思考の今村の人格が変わったわけではなく、しょっちゅうウジウジしながらも、かつて気になりながらも入らなかった応援団に今度は入団し、なんだか色々なことをします。

 

 今村の好きなところは、かつては何もせずスルーしてきたところを、今度は決断をしてみるわけなのですが、その決断の多くがヤケクソ気味な感じということです。自分の本来の考え方でいえば、一度目のように合理的な帰結として何もやらないということになってしまうのですが、一度目を無為に過ごした後悔もあってか、二度目はヤケクソ気味に決断をして他人と関わります。それは、本来の自分の形質とは離れているため、色々とやらかしてしまったりもしますし、その決断を後悔することもままあります。それでも、無理矢理にでも決断をしたということに強く共感をします。

 

 僕も今村と同じく基本的にネガティブ思考で、できれば何もしたくないですし、一人で本でも読んでいたいと思い続けて生きている感じなのですが、それだと食っていけないので、ヤケクソな感じに決断をすることで今まで生き延びてきました。何かの依頼や要請を受けたときに、やらない方が楽だと思いながらも「やります」という返事を書いて、でも、送信ボタンを押せずにウジウジと迷いながらウロウロし、決断を迫られるギリギリになって「ええい!ままよ!!」とばかりに送信した結果、地獄への道が開けており、その決断を延々と後悔し続けながら、渦中で死んだ目で働いているわけなのですが、大体終わってみればやらないよりもやって良かったという感じになっていて、それで、だから、今も食っていけています。

 

 理性は他人と関わらないといけないと思っていて、本能は誰とも関わりたくないと思っていて、それを関わる方向に無理矢理一気にシフトさせる現象がヤケクソだと思うのです。

 

 ネガティブな精神の形質を持っている人は、聖域なき構造改革を経なければポジティブになれない感じがしますし、よほどのことがない限り、僕は多分一生ポジティブに真っすぐに世の中と向き合うことはできないんじゃないかと思っているのです。漫画で描かれる、そういう人間が、世の中と関わりたくないながらに、それでも関わろうとする人間の姿に励まされる感じがします。

 

 また、アゲイン前の世界と、アゲイン後の世界の関係性はまだ作中ではちゃんとは解き明かされていないのですが、アゲイン前の世界に一度再び戻ったとき、変えたはずの過去がが変わっていなかったということが面白くて、それは結局過去に戻っても、現在の世界は何も変わらなかったということです。でも、唯一変わったことといえば、今村自身には三年前のやり直したアゲイン後の世界での経験があることです。これは結構、「世の中」と「漫画を読んでいる読者」の関係性に似ていて、いくら漫画の中で素晴らしいことが起きたとしても、現実の世界には影響がなく相変わらずです。でも、漫画を読んだ読者の心はその影響で少しは変わっていて、だから、そんな変わらない世の中の見方が少し変わったりもすると思います。

 

 他人と関わるということをネガティブに捉えてしまうのは、そこに発生する様々な煩わしいことを思ってしまうからだと思います。そこを、あたかも素晴らしいことだけであるかのように描かれても、それは自分には関係ないことだと思ってしまいがちです。でも、関わった方が良いとは思い続けていて、だからこそ、七転八倒しながらも世の中とヤケクソで関わり、そして、それで、かつて後悔した過去よりも良くなるという、この物語に強く惹かれてしまうのかなと思いました。